木漏れ日の中の光

 まだ下を向いたまま、兄さんは唇を噛みしめて、小声で私に言った。

「…ゴ、メン」

 兄さんは苦しそうに言葉にしてから、ドタドタと足を強く踏み出して、自分の部屋へ戻った。

 「ゴメン」は私に対する言葉や態度のことなのだろうか。

 でも、うつになったからって、私が私じゃなくなるような言葉を放たないでほしい。

 私だって、苦しいんだよ。

 母さんもいなかったので、ソファーに座り込み、近くにリモコンがあったのでテレビをつけた。

「ニュースです。四月になり、全国各地で桜が開花したそうです。四月が始まると同時に新生活が始まります。皆さん、ほどよく楽しみながらお過ごしください」

 女性アナウンサーの清々しい声が私の耳に届いた。

 気遣いがあって、きちんと情報を伝えてくれるアナウンサーの声で私はソファーに背中を預けた。

 “ほどよく楽しみながら”か。

 それが私にとって、難しいんだよ。

 楽しみながらは簡単に見えて、できない。

 相手に見られている視線、マスクを外した時の反応。

 どんなに頑張ってもこの苦しさは消えない。