木漏れ日の中の光

「起きたんだな」

 ぽつりと呟く声に振り向くと、兄さんが私の近くに立っていた。

「うん」

 私は返事をしてからシンクに視線を変えて、会話が終わったのでまた洗い物に戻った。

 それでも、兄さんはそのまま動かなかった。

 私は振り返り、兄さんを見る。

「なに?」

「…いや…別に。ただ……」

 兄さんは言葉に詰まっているので、洗い物をしながら言葉を待った。

 皿を全部洗い終えてから、キッチンペーパーで拭き取り、食器棚に戻した。

 私が食器棚に動いても、兄さんは下を向いたまま黙っていた。

 いつも、そう。

 兄さんは私と二人になると、なにも言わなくなる。

 母さんと私の時では態度が明らかに違う。

 兄さんは有給消化中という体で、実家に戻ってきた。

 休みをたくさんもらえたのは、うつになったから。

 母さんは元々兄さんには甘いが、以前より増して甘くなった。

 兄さんの言うことは、必ず正解だと考えている。

 兄さんが母さんの前で強気なのは、長男を演じているから。

「…私、やること終わったんだけど、兄さんなんか私に話したいことあるの?」

 私は兄さんを見据えて聞いた。