木漏れ日の中の光

「……推しに顔バレしないようにしてるなら、配信アプリだけではよくないの? 学校でもしなくてよくない?」

 私がそう言うと、いきなりテーブルを手で叩いて、「違う!」と少し強い口調で言う。

「違うのよ。同じ推しはいつどこにいるのか分からないから、マスクは欠かせない。花染さんは?」

 自分の話を終えたので、私に話を振ってきた。

 私も話したい。

 こんなにもっと話したいと思うのは、なかなかない。

「私は、人前で外せない。人の視線が気になって」

 俯きながら、私は重い口を開いた。

「…そっか」

 水篠さんは返事をするだけで、何も聞いてこなかった。

 私は隣にいる水篠さんに目をやると、ただ表情を変えずに佇んでいた。

 聞いてくるかと思った。

 それが私にとって、救いだった。

「ありがとう」

 私はカップを両手で持ち、一口含んだ。

 その味わいは深くて甘くて、口当たりがなめらかだった。

「なにが?」

 水篠さんは鼻の下までマスクをずらして、低い声で言う。

「なんでもない」

 私はカップに口をつけて、ひそかに微笑んだ。

「ねぇ、クラスには友達いる?」

 頬杖をつけて、水篠さんはなにげなく私に尋ねた。