木漏れ日の中の光

 私は唐突に尋ねた。

 急になんでそんなこと聞くんだよと思われるかもしれないが、ただ聞きたかった。

 私と同じように年がら年中、マスクをしている人に出会ったことがなかったから。

 水篠さんは天井を見上げて、うん? と首を傾げながら答えた。

「私はね、推し活のためにマスクしてる。推しにね、顔バレしたくなくて」

 ああと呟いてから項垂れて顔を隠していた。

「ああ、恥ずかしい!」

「いえ…」

 私は少し後ろを振り向き、言葉を続ける。

「でも、推しに顔認識してもらえるのは嬉しいんじゃないんですか?」

「また、敬語! ウチらさ、同い年なんだからタメでいいよ。気楽にして」

 足をバタバタしながら、翔月はソファーに寝転んでいた。

「…うん」

 私が返事をすると、水篠さんは急に真面目なトーンで言う。

「本当は推しにバレたいと思ってる。でもね、それと同時に怖いと思ったの」

「怖い?」

 私は思わず、聞き返す。

 なぜ、推しにバレることで怖いと感じるのだろう。

 私には理解しえないことだけど、水篠さんには水篠さんなりに怖さがあるのか。

「うん。怖い。これが、推し」