木漏れ日の中の光

 マスクを片手で握りしめたまま、走り続けた。

 いつもの停留所に着くと、私は息切れをしたまま止まった。

 息が苦しい。

 目を瞑って、胸を手に当てて、呼吸を整える。

 顔を上げると、右側からバスがきた。

 扉を開けると、運転手さんがおはようございますとニコリと微笑んでいた。

 私も少し口角を上げて、挨拶を返した。

「鈴子」

 私が呼ぶと、小テストが近いのでテキストを読んでいた。

「……詩」

 鈴子と会うのは、あれ以来だった。

 クラスメイトにマスクのことを聞かれて、逃げた時だった。

「……よぉ」

 小さく手をあげた私は鈴子が少し目を丸くしてから答えた。

「よぉ。元気か?」

 テキストを鞄にしまい込み、鈴子の隣にゆっくりと私は座った。

「元気だよ。鈴子は?」

 私は口角を上げてから鈴子の方に顔を向けた。

「……ならよかった。今日の小テストあるからさ、やった?」

 鈴子は手に持っていたテキストを上にあげて、ページをめくった。

「ああ、古文のところだね。小テストか」

 私は天井にあったエアコンのフィルターを目を凝らした。

「小テストあるの知ってた?」