木漏れ日の中の光

 テーブルにあった鮭おにぎりを一個手にしてから、リビングを出た。

 母さんは何も言わずにただ無心に料理を作っていた。

 鮭おにぎりを片手に持ち、靴に履き替えて、玄関を出た。

 心の温もりを保とうとしていたのに、外に出ると、曇り空のせいか心がざわついた。

「はぁ」 

 思わず、ため息が漏れる。

 家を出る前から足取りは重いのに、さらに重くなった。

「……」

 急に言葉すら出てこなかった。

 そんな時、スマホからバイブ音が鳴った。制服のジャケットからスマホを取り出して、通知をタップした。

「翔月……」

 電話の相手は翔月だった。

 不安なことになると、私の異変に気付いたかのように連絡がくる。

 でも、翔月に甘える訳にはいかない。

 翔月の通知が留守電に変わった。

 留守電が一件あるとスマホに通知され、それをタップした。

“詩。大丈夫だから。心配しないで“

 安心した。

 翔月の声で私が私に戻れた。

「分かった」

 前へと突き動かす道しるべのように、身体が勝手に動いた。

 おもりが足に繋がれていたのが取れたように、前へと軽快に足が動いた。

 なんだろう。早く早く、行きたい。