嫌でも、私は学校を休まない。
休みたいけど、自分に負けた気がするから。
蝉が鳴く頻度が少なくなった。
もう少しで夏が終わりに近づいている。
そんな気がした。
階段をバタバタと駆け下りて、気は乗らないがリビングへと足を運んだ。
ドアを開けると、そこには母さん一人だけだった。
キッチンに立って、いつも通りに朝食を作っている。
昨日、何事もなかったように。
兄さんは起きてないのかな。
リビングを一回り見渡したら、母さんが口をゆっくりと開けた。
「お兄ちゃんは買い物に出かけた。そこにメモあるでしょ、ほら」
母さんはそう言ってから指をさした。
指を差した方向へ私は顔を向けると、テーブルにメモが置かれていた。
近所のスーパーに出かけてくるとぶっきらぼうな字で書かれていた。
久々に書いたのかな。
兄さんの字は前よりも少し汚くなっていた。なんだか一生懸命に書いているところを想像すると笑いがこみ上げてきた。
マスクをしているが母さんに気づかれないように口もとを手に当てて、笑いをこらえた。
「朝ご飯は食べるの?」
初めて、朝ご飯を食べるのかと聞かれた。
「いい。適当に食べるから」
母さんは案外冷たいようで温かいのは分かっている。
それでも、私を否定するところから入ってくる人を、信じるのは難しい。
信じたいけど、信じられない。
「そう。詩。母さんはただあなたのことを想っているだけだから、それだけは信じて」
母さんは顔色を変えることなく、表情だけが何かを物語っていた。
言いたいことは分かった。
私の言うことちゃんと聞いてよと言っているようだった。
「信じて」という言葉は、本当なのか疑ってしまう。
私のための理由が私を苦しめているのは分からないのか。
「……分かった。じゃあ、これだけもらっていく」



