木漏れ日の中の光

 それを聞いた母さんはすぐ言葉を返した。

「お兄ちゃん!」

 母さんは兄さんの言葉に反応をして、大きい声で叫んだ。

 母さんの方向へ兄さんは顔を向けて、声を発した。

「詩はもう、母さんが思っている詩じゃないんだよ。俺は母さんのことを気にして、母さんの理想とする息子を演じてた。でも、もう俺も俺じゃなくなってるんだよ。分かってる? 詩だけじゃない。母さんの理想像を、もう俺たちが担うことはできないんだよ」

 いつの間にか兄さんは起き上がって、母さんの目の前で話し始めた。

 兄さんは唇を噛みしめて、母さんを睨んだ。

 初めて見る息子の姿に驚いたのか、母さんは目を点にしていた。

「……お兄ちゃん」

 目頭が熱くなったのか母さんは手に口をあてて、兄さんを呼んだ。

 兄さんは母さんの姿に何も言わずに、また言葉を重ねる。

「母さんは俺たちを分かっているつもりになっているんだよ。きちんと俺たちの現実を見て。母さんは今、どこにいるの?」
 
 兄さんは私の隣に来て、手を繋いだ。

 久しぶりだ。

 兄さんの温もりがある手は。

 小学校の頃は当たり前のように兄さんと手を繋いでいた。