木漏れ日の中の光

 走り出してすぐに、息が苦しくなってきた。

 少し身体がきつくなってきた。

 ちょうど信号機が赤になったので立ち止まった。

 空を仰ぐと、雨があられのように強く顔に当たり、思わず声が出た。

「痛っ」

 このまま歩くのは危険だと感じて、近くにあった大型本屋の玄関先へ避難した。

 同じく避難していた人たちは、口々に言っていた。

「この雨、いつまで降るんだろう。このまま歩けないしな」

「天気予報では雨予報ではなかったのにね。いつ晴れるかな」

 三十代くらいの夫婦だろうか。

 旦那が傘を差し、片手で妻の手をギュッと握っていた。

 二人は優しく微笑みながら空を見上げていて、幸せそうだった。

 その姿を見て、私は呆然と隣でその光景を見ていた。

 幸せって、こういうことを言うのかな。

 私は自分のことで精一杯。

 なんでなんだろう。

 口元まで下げたマスクを手で強く握りしめた。

 隣にいる夫婦の幸せそうな雰囲気を見られなくて、目を逸らした。

 情けない自分がどうしようもなく、悲しくなった。

 マスクすら取れない私。