木漏れ日の中の光

「詩のマスクの件で話があるって。俺も母さんがあんなに怒ってるのを見るのは久しぶりだ。なにかしたか?」 

 兄さんは怪訝そうに私に言う。

 そう言われて考えたが、なにも思い当たる節はなかった。

「……ない」

 私はポツリと呟き、考え込んだ。

「そうか」

 兄さんはただ返事をして、一階へ下りて行った。

 私は兄さんについていくかのようにリビングへと向かった。

 リビングに入ると、母さんは仁王立ちで私を待っていた。

「……母さん」

 私は母さんの顔を見て、呼んだ。

 呼ぶ声は母さんには届かずに、ただ私に暴言を吐いた。

「詩! なにしてんの!」

「母さん」

「なんでまだマスクをしてるの? お隣さんに言われたわよ。なんで詩ちゃんはマスクしてるの。体調でも悪いのって。具合なんて悪くないわよね。じゃあ、マスク取ってよ」

 母さんは近くにあったリモコンを投げ捨てて、うわぁーと喚いた。

「……母さん」

 私は母さんを呼んでも、声が届かない。

 それを見た兄さんは「母さん!」と呼んで、腕を掴んだ。

「やめて! あんたには関係ないでしょ!」

 母さんは兄さんにも怒鳴り声を浴びせた。