木漏れ日の中の光

 それとも、悩みを抱えているから?

 なんで――なんで?

「はいはい。詩、行くよ」

 泣いている私を見て、ニコリと微笑んだ。

 私の手を取り、翔月は駆け出す。

 廊下を走る私たちに黒望先生の怒鳴り声が響いた。

 走っているうち、私は笑ってしまった。

 黒望先生がこんなに表情豊かだったんだ。

 無表情な彼女が眉を上げて、怒る姿に私は声を出すほど笑えてきた。

「アハハハハハ」

 笑えるんだ、私。

「……詩?」

 駆けている途中、翔月は心配そうに後ろを振り向いて、聞いてきた。

「大丈夫。大丈夫! アハハ」

 黒望先生の怒った顔が目に浮かんで、笑いすぎて涙が出てきた。

 私は翔月の手を強く握って、駆ける足を止めなかった。

 どんなに黒望先生が怒っていても――

 この手を離さなかった。

「翔月!」

「なに?」

「アハハアハハ」

「ねぇ、本当におかしくなった?」

 翔月はまた後ろを振り向いてから、前に歩き続けた。

 もう授業が始まっているので、廊下には誰もいない。

 先生も生徒も――

 玄関先まで辿り着いて、私たちは慌てて外履きに履き替えた。