キミの1番にはなれないと思ってたけど、


相変わらず深町を覗き見する日々が続きながら、中間テストが終わって、1週間ほど経った頃。


「体育祭の種目決めるぞー」

担任が黒板に大きく文字を書いた。

教室が一気にざわつく。


「もうそんな時期?」

「早くない?」

「何出る?」

梅雨が明けるにはまだ早いけれど、

体育祭という言葉を聞くと、なんとなく夏が近づいてきた気がした。


ふと教卓を見ると、

「男子は最低2種目なー、じゃあ学級委員進めてくれ〜」

と担任は投げやりに全てを任せた。


かわいそうに…と少し同情し、皆が協力して早く終わらせようとやる気になった。

我ながらいいクラスだ。

学級委員2人が教卓に立ち、進めていく。


「リレー出たい人ー!」

「俺無理」

「じゃあ瀬良!」

と佐藤が右にいる俺を見ながら推薦する。


『なんで俺?』

「足速そう」

『見た目だけで決めんなって』

笑いが起こる。

「深町は?」

突然、学級委員の男子から名前を呼ばれた、深町が顔を上げる。

「俺?」

「運動できそうじゃん」

「普通」

「普通って一番困るやつ!」

また笑いが起きる。

深町は少しだけ困ったように眉を寄せた。

「何でもええよ」

「じゃあリレーいいの?」

「……別に」

「決まり!」

「勝手に決めんな」


そう言いながらも、本気で嫌そうにはしていない。

俺はそれを見て笑った。

深町はパッと振り返り、俺の方を見ながら

「…じゃあ、瀬良もリレーな」

『結局、俺まで?』

「一緒にやったら楽しいかなと思って…どう?」


さっきまで言葉は強めだったのに、

ちょっと覗き込むように不安げに聞いてきた。

『……』

その顔を見て、一瞬、言葉に詰まった。

『まあ、いいけど』

思わず誘いに乗ってしまった自分にチョロいなぁ〜…と少し反省した。



そのあと、種目決めは思ったより難航した。

「綱引き誰?」

「男子足りない!」

「障害物競走は?」

「誰か出て!」

誰も手を挙げない状態が続いた。


「二人三脚は!?どうやって決める?!」

それを見かねたのか、担任が、

「二人三脚は身長近いもん同士で組めよー」

と言った瞬間。


教室中で一斉にペアができていく。

どうしよ、二人三脚出ようかな。


んー…でも、誰と組もうかな…


誰かに声掛けようかと立ち上がったら

そのとき、

後ろからパッと手首を掴まれた感覚があって、

反射的に後ろを振り返ると同時に

「瀬良」

と呼びかけられたため、その声の主を探した。



『ん?!あ、』


深町だった。


「…良かったら俺と組まへん?」

『……俺?』

「うん」

一瞬考えて、深町を見る。


身長差。

確かに、そこまでない…けど、


『いいけど……』

少し迷ってから、

『深町、俺でいいの?』

深町が怪訝そうに眉を寄せる。


「…なんで?」

『いや、もっと身長近い人いるかなって』

「んー…瀬良が1番近い」

「……そう?」

「距離がな」

『……ん?距離??』


聞き返したものの、返事が返ってこなかった。

…触れない方がいいのか?


そして、何でもないことみたいに、

「じゃ、決まり」

とクラスメイトに深町がペアを申し出てくれて、黒板に2人の名前を書く。


二人三脚
深町 瀬良

並んだ名前を見て。

なんとなく、胸がくすぐったくなった。


2種目は決まったので、もう安心して、他の種目を決める姿を眺めていた。

同じくボッーとしてそうな深町に、

身体ごと斜めに乗り出すようにして、ギリギリ届く距離まで腕を伸ばして声掛けた。


『なぁ、深町』

「ん?」

『深町って、足遅い?』

「普通」

『おぉ、俺も』

「じゃあちょうどいいやん」

『えっ、何が?』

「2人とも普通」

驚きながら段々とニヤついてきている自分がわかった。

そんな俺を見てなのか、

「……ふっ」

深町が笑った。

まただ。

最近、この笑い方を見ると、少しだけ嬉しくなる。