それから、深町のことをよく見るようになった。
授業中。
休み時間。
は、違うクラスの人?がよく会いに来て話してる。
昼休み。
…は、いないことが多い。
別に、ずっと見ているわけじゃない。
ふと気づくと、視界のどこかにいる。
それだけだった。
今日もボッーと頬杖つきながらクラスメイトの席で話していて、少し遠くにいる深町を眺めていた。
「……瀬良?」
『ん?』
「さっきから何見てんの?」
佐藤に言われて、誤魔化そうと黒板のほうを指差した。
『黒板』
「いや、どっちかっつーと方向的に深町じゃね?」
『……見てた?』
「めっちゃ」
『…そっか』
「なんで?」
『なんでって?』
「深町のこと、気になる?」
『……まあ?』
「へえ」
ふと、彼の顔を見ると、ニヤニヤしている。
クラス1のお調子者の佐藤に弱みを握られたら、
俺の平穏な学生生活は終わりを迎えるかも…しれない。
ま、それは大袈裟に言ったけど
『何、その顔』
「別に?」
『絶対なんか思ってるだろ』
「いや?瀬良が誰か気にするの珍しいなと思って?」
『人のこと気にするくらいするって』
「ふーん」
彼も飽きたのか、それ以上は何も言わず、話題を変えてくれた。
助かった。
自分でも、まだよく分かっていない。
深町が気になる。
それだけ。
ただ――。
話してみたいと思った。
もう少し。
深町は、クラスの中でよく誰かと話している。
特定のグループにいるわけじゃない。
男子とも女子とも話す。
頼まれ事をされれば普通に引き受けるし、
困っている人がいれば自然に手を貸す。
でも、自分から誰かの輪の中心に入っていくことはあまりない。
その距離感が、なんとなく不思議だった。
誰とでも仲良くできるのに。
誰かに依存しているようには見えない。
――そういうところも、前に見た姿と同じだった。
受験会場で見たあの日も。
誰かに褒められるわけでもないのに、
当たり前みたいに人を助けていた。
たぶん本人は、もう覚えていない。
俺があの日のことを覚えていることだって、知らない。
*
「……ふ、」
休み時間。
ドア付近で別クラスの友達?と話してる姿を見かけて、衝動的に声をかけようとして、やめた。
わざわざ割って入るほどでもない。
別に、急ぐ必要はない。
そう思って、スマホを見る。
けれど。
数分後。
気になってまた見てしまう。
まだ話している。
「……何やってんだ、俺」
思わず自分の行動のできなさに笑った。
自分から話しかけるなんて、いつ以来だろう。
いつもなら、誰かが話しかけてくる。
俺はそれに答えるだけ。
甘えていたことに今更気付く。
だから、困ったことはなかったんだ、って。
なのに。
深町に関してだけは、なぜかタイミングを待っている。
