キミの1番にはなれないと思ってたけど、


テスト返しの数日間続く期間中は、どうしても教室が騒がしい。

「何点だった?」

「やば、終わった」

「見せて見せて」

そんな声が、あちこちから聞こえてくる。



俺はというと…

理数系は悪くなかった。


これは毎回。


でもそれ以外は……

今回は特に、地理。


『……』

思ったより悪かった。

まあ、ほぼノー勉で挑んでしまったから当然か。

答案を裏返して、机の端に置く。

席に戻るついでにクラスメイトが俺の席を横切りながら、

「瀬良、何点?」

と聞いてくる。


本当に興味あんのか、こいつ…


『聞く?』

「聞く」

『じゃあ聞かないで』

「なんでだよ」

その素早いツッコミに思わず笑う。

それが答えか!と言いながら他のやつらにも絡んで、

点数を聞きに行ったのを横目に、

そのとき、斜め前から紙をめくる音がした。


深町だった。

先生は騒ついてる生徒たちには特になにも言わず、黒板に解説を書いている。


また、視線を深町に戻すと、

返ってきた答案を眺めているみたいだ。

その瞬間。



『……え』

思わず声が出た。

見えた。

深町の地理の点数。


赤点ではない。

けれど、

ギリギリ。

ほんの少しだけ。

なんなら俺の方が点高い…


俺が思わず二度見したのを、

深町は斜め後ろだというのに察知して見逃さなかったらしい。

ゆっくり振り返る。


「……見たやろ?」

口元だけ、ニヤッと笑った。


『えっ』

「見たやん」

『っいや、あの、見ようと思ったわけじゃなくて』

「まぁ別にええけど」

そう言って、深町はまた前を向く。


『なんか……意外だったかも』

「……」

深町がもう一度振り返った。

「それ、どういう意味?」

『え?』

「悪い意味にしか取れへんねんけど」

『あ、いやっ……』

しまった。

言い方を間違えた。

『まぁ……その、ギャップだわ』

「……」

深町が少しだけ目を細める。

「ふっ」

小さく笑って、椅子に手をかけて、

通路側に足を横向きに投げ出し、完全にこちらに体を向けてくれた。


「褒めてへんから、それ」

『いや、褒めてるって!』

「どこが?」

『なんか……意外だったっていうか』

「同じこと言ってるだけやん」

「……」

返す言葉がない。

深町は、それ以上何も言わなかった。

ただ、下を向きながら少しだけ小刻みに上下に肩を揺らしている。

よく見ると…

笑っている。

……なんなんだ、こいつ。

クールなのか、そうじゃないのか。

よく分からない。