*
次の日。
HRが終わり、1時間目の準備をしていると、
後ろの席のやつにちょんちょんと背中を叩かれ、振り返ると、
「そういや聞いた?」
『え、なにを?』
「あ、聞いてない?3限目、席替えするって」
『…へぇ、マジ?…あれ、現代文は?』
「あー…今度、振り返えするらしい。」
『どこ情報?』
「なんか先生が佐藤にポロッと言ったらしいよ?」
興味ありげにうまくリアクションを返しながら、
頭の上で手を組んで、そのまま手を頭に置きながら椅子にもたれて黒板のほうを見る。
席替え。
別に、どうでもいい。
そう思っていた。
少なくとも、そのときまでは。
*
3時間目。
早速、聞いていた通り、席替えが行われた。
「はい、出席番号順にくじ引いてー」
担任が、教卓に置いた箱を指差して言う。
俺は適当に1枚取った。
紙を開く。
書かれていた番号を確認して、黒板を照らし合わせつつ、新しい席へ移動する。
『……ここか』
窓際から少し離れた、真ん中あたり。
列は後ろから数えた方が早い位置。
…前より悪くない。
移動のために積み上げた椅子の上にあった鞄を机の横に掛けて、
椅子を下ろして、やっと座る。
ふと、目線を向けた先に、
男子が机を置いて立ち止まり、椅子を下ろしていた。
…クラス変わってからあまり話したことないヤツだ。
背が高い。
目の色も髪も漆黒。
制服の着方も、別に目立つわけじゃない。
けれど。
なんとなく目に留まった。
「……」
男子が顔を上げる。
目が合った。
『あ』
思わず声をあげたらそれに対して、向こうは少し目を細めてくれた。
「瀬良?」
『ん?』
「深町」
『……うん、知ってるよ(笑)』
同じクラスだから
もちろん、名前は知っている。
深町 環。
…多分、関西人?
…それくらいしか知らない。
同じクラスとはいえ、話す機会がなければそのくらいしか知り得ない。
深町は、クラスの誰とでも話すけれど、特定のグループにべったりいるわけじゃない。
俺と同じ。
でも違うのは、選べるなら1人がいいのに、
日和って皆と程よい関係を保っている俺とは違って、
好き好んで1人を選択している、というところだ。
だけど、休み時間に誰かと話していることもある。
…不思議な人だ。
話したことはなかったが、何故か、妙に印象に残っていた。
『近くなったね』
「そうやな」
『よろしく』
「こちらこそ」
それだけ。
それだけだった。
……なのに。
なぜか、気になった。
深町が席に座る。
後ろからその横顔を見て。
胸の奥に、引っかかるものがあった。
――どこかで見たことがある。
そう思った。
でも、思い出せない。
「瀬良〜」
左隣になった佐藤が声をかけてきた。
『ん?』
「よろしくな、って…あれ、どした?」
『え?…いや……』
不思議に思ったのか、深町もこちらを見ているのを視界の端で感じる。
『っ、なんでもない』
「そう?」
『うん、よろしくな?』
「おう!」
それ以上聞かれなくてホッとした。
興味が薄れたのか、深町も前を向いた。
俺も黒板を見る。
けれど。
さっきから、頭の片隅にずっと残っている。
どこかで見た。
絶対に。
でも、どこでーー?
次の日。
HRが終わり、1時間目の準備をしていると、
後ろの席のやつにちょんちょんと背中を叩かれ、振り返ると、
「そういや聞いた?」
『え、なにを?』
「あ、聞いてない?3限目、席替えするって」
『…へぇ、マジ?…あれ、現代文は?』
「あー…今度、振り返えするらしい。」
『どこ情報?』
「なんか先生が佐藤にポロッと言ったらしいよ?」
興味ありげにうまくリアクションを返しながら、
頭の上で手を組んで、そのまま手を頭に置きながら椅子にもたれて黒板のほうを見る。
席替え。
別に、どうでもいい。
そう思っていた。
少なくとも、そのときまでは。
*
3時間目。
早速、聞いていた通り、席替えが行われた。
「はい、出席番号順にくじ引いてー」
担任が、教卓に置いた箱を指差して言う。
俺は適当に1枚取った。
紙を開く。
書かれていた番号を確認して、黒板を照らし合わせつつ、新しい席へ移動する。
『……ここか』
窓際から少し離れた、真ん中あたり。
列は後ろから数えた方が早い位置。
…前より悪くない。
移動のために積み上げた椅子の上にあった鞄を机の横に掛けて、
椅子を下ろして、やっと座る。
ふと、目線を向けた先に、
男子が机を置いて立ち止まり、椅子を下ろしていた。
…クラス変わってからあまり話したことないヤツだ。
背が高い。
目の色も髪も漆黒。
制服の着方も、別に目立つわけじゃない。
けれど。
なんとなく目に留まった。
「……」
男子が顔を上げる。
目が合った。
『あ』
思わず声をあげたらそれに対して、向こうは少し目を細めてくれた。
「瀬良?」
『ん?』
「深町」
『……うん、知ってるよ(笑)』
同じクラスだから
もちろん、名前は知っている。
深町 環。
…多分、関西人?
…それくらいしか知らない。
同じクラスとはいえ、話す機会がなければそのくらいしか知り得ない。
深町は、クラスの誰とでも話すけれど、特定のグループにべったりいるわけじゃない。
俺と同じ。
でも違うのは、選べるなら1人がいいのに、
日和って皆と程よい関係を保っている俺とは違って、
好き好んで1人を選択している、というところだ。
だけど、休み時間に誰かと話していることもある。
…不思議な人だ。
話したことはなかったが、何故か、妙に印象に残っていた。
『近くなったね』
「そうやな」
『よろしく』
「こちらこそ」
それだけ。
それだけだった。
……なのに。
なぜか、気になった。
深町が席に座る。
後ろからその横顔を見て。
胸の奥に、引っかかるものがあった。
――どこかで見たことがある。
そう思った。
でも、思い出せない。
「瀬良〜」
左隣になった佐藤が声をかけてきた。
『ん?』
「よろしくな、って…あれ、どした?」
『え?…いや……』
不思議に思ったのか、深町もこちらを見ているのを視界の端で感じる。
『っ、なんでもない』
「そう?」
『うん、よろしくな?』
「おう!」
それ以上聞かれなくてホッとした。
興味が薄れたのか、深町も前を向いた。
俺も黒板を見る。
けれど。
さっきから、頭の片隅にずっと残っている。
どこかで見た。
絶対に。
でも、どこでーー?
