キミの1番にはなれないと思ってたけど、

ーー昼休みーー

冷静になって考えたくて、

適当な理由をつけて、1人になれるところを探しに校庭に出た。

今日のお昼ご飯は幸いにもパンだったから自由に持ち歩いた。

空いてるベンチがあり、見つけた瞬間に座った。

そして、さっきまでのことを思い出す。

《「毎日見てるし」》

《「俺が合わせるから」》

何気ない言葉だった。

深町にとっては、きっと。

でも、俺には違った。

嬉しかった。

もっと言ってほしいと思った。

もっと近くにいてほしいと思った。

ーー好きなんだ。

そう認めてしまうと、今までのことまで全部違って見えた。

前髪を直してくれたことも。

消しゴムを拾ってくれたことも。

俺がぼーっとしていたら気づいてくれたことも。

嬉しかったのは、深町が優しかったからじゃない。

深町だったからだ。


……でも。

そこで、ふと足が止まった。

頭に浮かんだのは、長谷部の顔だった。

深町と昔から一緒にいる。

俺の知らない話をたくさん知っていて、きっと、俺よりずっと深町のことを分かっている。

この前、一緒に帰ったときも。

2人にしか分からない話で、あんなふうに笑っていた。

俺は、まだ深町と話すようになって1ヶ月ちょっと。


長谷部は、もっとずっと前から。

……敵わない。

そう思った。

好きだと分かった今だからこそ、その距離が、前よりずっと遠く感じた。

深町の一番近くにいるのは、俺じゃない。

それでも。

一度知ってしまったこの気持ちを、

なかったことにはできなかった。



それからというもの。

俺は、深町をよく見るようになった。

授業中、誰に当てられるかわからない状態でも毎回真剣に悩んでいるところ。

実際、当てられたら飄々と答えているところ。

休み時間、誰かとくだらない話をして笑っているところ。

体育祭の準備で、頼まれたことを黙々とやっているところ。


前なら、ただ「深町がいる」と思うだけだった。

でも今は違う。

笑っていると、嬉しくなる。

誰かと楽しそうに話していると、つい目で追ってしまう。

こっちを見て、笑ってくれたらな、と思ってしまう。

でも、いざこっちを向けば、目が合う前に逸らしたくなる。

……なのに。

また見てしまう。

自分でも、どうしようもなかった。

今までと同じ深町のはずなのに。

俺の中で気持ちに名前がついた途端、その姿が、少しだけ違って見える。


笑った顔も。

声も。

何気ない仕草も。

全部、前よりずっと輝いて見えた。

そんな自分がおかしくて、少しだけ笑ってしまう。

こんなにも分かりやすく変わるものなんだな。


……なんて。

その頃の俺は、そんなことを考えていた。

まさか。


俺が自分の気持ちに名前をつけた、そのすぐあとに。

その変化に気づいていた人がいたなんて。

このときの俺は、まだ知らなかった。