*
次の日。
朝、教室に入ると、深町はもう席に着いていた。
「おはよ」
『おはよう』
いつも通りの挨拶をして、自分の席に座る。
すると、
「瀬良」
『ん?』
「答えるの嫌やったら、答えんでもいいねんけど、」
『うん?』
なにその前置き(笑)
「…昨日、一緒におった子」
『……ああ、慧?』
「ケイ?くん?」
深町がこっちを見る。
目が合う。
「他校やんな?あっちは学ランやったし」
『ああ、どういう関係か、って?』
「…まぁ…そう」
『幼馴染だけど』
「幼馴染?」
『うん、小学校からずっと一緒』
「へえ……、あ、前に言ってた秀才くん?」
『あ、そうそう、だから毎回テスト期間は特にお世話になってて』
「…ふーん……なんかめっちゃ綺麗な子やったね」
『綺麗??なにが??』
「ふっ…顔にハテナ浮かばせすぎやろ(笑)」
『そんな出てた?』
「出てた(笑)」
『恥ずかしっ』
「…ふふ」
『でもほんと、何が綺麗だったの?』
「顔立ちが整ってた」
『あー…そう?』
「そう?って……(笑)」
『ずっと一緒にいるから、よく分かんないな』
「ああ……そういうもんか」
『慧、昔からあんな感じだし』
「あんな感じ?」
『男子校だから、自分がどう見られてるかとかも知らないと思う』
「……へえ……」
深町はそれだけ言って、斜め後ろに向けていた体を戻して前を向いた。
……なんだったんだ?
わざわざ聞くほどのことでもない気がするけど。
そんなに知りたかったのか?
まあ…言われてみれば慧は顔だけは、綺麗なのかもしれない。もう見慣れたけど。
でも、まあ、聞いてきたの、深町だし。
俺も特に気にせず、教科書を机の中から取り出した。
ーー昼休みーー
購買から戻ってくると、教室の入り口に他クラスの女子たちが集まっていた。
囲まれている先を見ると…
深町だった。
「深町くん、生徒会のTシャツ!デザインどうする?」
「ああ…んー…こっちちゃう?」
「えー…?それならこれの方が良くない?」
「うーん、でも、これはアレやからさ…」
「え、確かに…!ありがとう!」
「さすが!やっぱり深町くんに相談して良かった!」
「ん」
まただ。
深町は誰に対しても同じ。
特別優しいわけじゃない。
でも、頼まれたら断らない。
その距離感が、なんとなく深町らしい。
でも俺は、モヤついた。
その感情をまた見なかったことにして、俺は自分の席に戻った。
*
午後の授業。
眠気と戦いながらノートを取っていると、
カサッ…
と音がして反射的に前を見た後に、机の上を見ると、
4つに乱雑に折り畳まれて、1枚にちぎられたルーズリーフが。
【瀬良】
と男子の字ではあるものの丁寧な字で、表面に書かれていたため、開いてみると
『……?』
【寝てたな?】
という文面とともに恐らく俺の似顔絵なのか、
お世話にもうまくはない絵で、半目で俯いている姿が一緒に描かれていた。
描いた人物がわからず、先生にバレない程度にキョロキョロ周りを見渡していると、
肩を上下に震えさせて多分笑っているだろう犯人を見つけた。
後ろからだと絶妙に渡せない距離なので、
彼にテレパシーを送って、受け取ってもらうように合図をした。
《いや?寝てない》
それを見た後は、手紙での交換は先生にバレるリスクが高まると思ったのか、
ノートに大きく書いて、それを体の隙間から見せてくる手法に変えたようだ。
【寝てたやん】
見せながらこっちを見ていたので、
「ちょっとだけ」
と目が合いながらジェスチャーで表現した。
それを見てすぐに、さっき書いた字を消して、またデカデカと書いてくれた。
【先生見てたで】
その字を見て思わず、パッと前を見ると、先生と目が合った。
そしてすぐに逸らした。
アイツ、また笑ってるな?
視界に映ってるからな?…いつか仕返ししてやる…。
こちらもノートに大きく
《起こしてよ》
と書いて、反対向きにして見せた。
【起きたからええやん】
何を書くか迷っていると、深町がこっちを向いてギリギリ聞こえるか聞こえないかの音量で
「……次は起こすな?」
と片手を口元に横向きに添えながら言った。
それを見て、胸がギュッと締め付けられた感覚がまたあった。
『ほんと?』
こちら側に半分体を向けている深町に口パクで伝えると、
「たぶん」
と、口パクで返してきた。
それを見て、
《そこは絶対って言って》
と、またノートを反対にして見せた。
書き記したものを見たのか、斜め後ろからでも深町が少し笑ったのがわかった。
まただ。
最近、深町が笑うと、つい見てしまう。
あのテスト返しの日から。
ふいに見せる笑顔が、妙に頭に残っている。
ーーキーンコーンカーンコーンーー…
授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
あんなに堂々としていたにも関わらず、
何故か無事にバレることなく(?)過ごしたわけだが、
あれから頭に入ってこず、そのままボッーとしていると、
「瀬良?」
眺めていたはずの背中が急に振り返った。
『……何?』
「見すぎ」
『…え?』
「俺のこと」
「……」
見られてた。
『いや、別に』
「ふーん?」
深町は興味が薄れたのか、そのまま教室を出て行った。
俺は誤魔化すように慌ててノートに視線を戻して、先生が書き残していった解説を板書した。
心臓が、少しだけ速い。
なんなんだ。
本当に。
次の日。
朝、教室に入ると、深町はもう席に着いていた。
「おはよ」
『おはよう』
いつも通りの挨拶をして、自分の席に座る。
すると、
「瀬良」
『ん?』
「答えるの嫌やったら、答えんでもいいねんけど、」
『うん?』
なにその前置き(笑)
「…昨日、一緒におった子」
『……ああ、慧?』
「ケイ?くん?」
深町がこっちを見る。
目が合う。
「他校やんな?あっちは学ランやったし」
『ああ、どういう関係か、って?』
「…まぁ…そう」
『幼馴染だけど』
「幼馴染?」
『うん、小学校からずっと一緒』
「へえ……、あ、前に言ってた秀才くん?」
『あ、そうそう、だから毎回テスト期間は特にお世話になってて』
「…ふーん……なんかめっちゃ綺麗な子やったね」
『綺麗??なにが??』
「ふっ…顔にハテナ浮かばせすぎやろ(笑)」
『そんな出てた?』
「出てた(笑)」
『恥ずかしっ』
「…ふふ」
『でもほんと、何が綺麗だったの?』
「顔立ちが整ってた」
『あー…そう?』
「そう?って……(笑)」
『ずっと一緒にいるから、よく分かんないな』
「ああ……そういうもんか」
『慧、昔からあんな感じだし』
「あんな感じ?」
『男子校だから、自分がどう見られてるかとかも知らないと思う』
「……へえ……」
深町はそれだけ言って、斜め後ろに向けていた体を戻して前を向いた。
……なんだったんだ?
わざわざ聞くほどのことでもない気がするけど。
そんなに知りたかったのか?
まあ…言われてみれば慧は顔だけは、綺麗なのかもしれない。もう見慣れたけど。
でも、まあ、聞いてきたの、深町だし。
俺も特に気にせず、教科書を机の中から取り出した。
ーー昼休みーー
購買から戻ってくると、教室の入り口に他クラスの女子たちが集まっていた。
囲まれている先を見ると…
深町だった。
「深町くん、生徒会のTシャツ!デザインどうする?」
「ああ…んー…こっちちゃう?」
「えー…?それならこれの方が良くない?」
「うーん、でも、これはアレやからさ…」
「え、確かに…!ありがとう!」
「さすが!やっぱり深町くんに相談して良かった!」
「ん」
まただ。
深町は誰に対しても同じ。
特別優しいわけじゃない。
でも、頼まれたら断らない。
その距離感が、なんとなく深町らしい。
でも俺は、モヤついた。
その感情をまた見なかったことにして、俺は自分の席に戻った。
*
午後の授業。
眠気と戦いながらノートを取っていると、
カサッ…
と音がして反射的に前を見た後に、机の上を見ると、
4つに乱雑に折り畳まれて、1枚にちぎられたルーズリーフが。
【瀬良】
と男子の字ではあるものの丁寧な字で、表面に書かれていたため、開いてみると
『……?』
【寝てたな?】
という文面とともに恐らく俺の似顔絵なのか、
お世話にもうまくはない絵で、半目で俯いている姿が一緒に描かれていた。
描いた人物がわからず、先生にバレない程度にキョロキョロ周りを見渡していると、
肩を上下に震えさせて多分笑っているだろう犯人を見つけた。
後ろからだと絶妙に渡せない距離なので、
彼にテレパシーを送って、受け取ってもらうように合図をした。
《いや?寝てない》
それを見た後は、手紙での交換は先生にバレるリスクが高まると思ったのか、
ノートに大きく書いて、それを体の隙間から見せてくる手法に変えたようだ。
【寝てたやん】
見せながらこっちを見ていたので、
「ちょっとだけ」
と目が合いながらジェスチャーで表現した。
それを見てすぐに、さっき書いた字を消して、またデカデカと書いてくれた。
【先生見てたで】
その字を見て思わず、パッと前を見ると、先生と目が合った。
そしてすぐに逸らした。
アイツ、また笑ってるな?
視界に映ってるからな?…いつか仕返ししてやる…。
こちらもノートに大きく
《起こしてよ》
と書いて、反対向きにして見せた。
【起きたからええやん】
何を書くか迷っていると、深町がこっちを向いてギリギリ聞こえるか聞こえないかの音量で
「……次は起こすな?」
と片手を口元に横向きに添えながら言った。
それを見て、胸がギュッと締め付けられた感覚がまたあった。
『ほんと?』
こちら側に半分体を向けている深町に口パクで伝えると、
「たぶん」
と、口パクで返してきた。
それを見て、
《そこは絶対って言って》
と、またノートを反対にして見せた。
書き記したものを見たのか、斜め後ろからでも深町が少し笑ったのがわかった。
まただ。
最近、深町が笑うと、つい見てしまう。
あのテスト返しの日から。
ふいに見せる笑顔が、妙に頭に残っている。
ーーキーンコーンカーンコーンーー…
授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
あんなに堂々としていたにも関わらず、
何故か無事にバレることなく(?)過ごしたわけだが、
あれから頭に入ってこず、そのままボッーとしていると、
「瀬良?」
眺めていたはずの背中が急に振り返った。
『……何?』
「見すぎ」
『…え?』
「俺のこと」
「……」
見られてた。
『いや、別に』
「ふーん?」
深町は興味が薄れたのか、そのまま教室を出て行った。
俺は誤魔化すように慌ててノートに視線を戻して、先生が書き残していった解説を板書した。
心臓が、少しだけ速い。
なんなんだ。
本当に。
