「デートはどうだった?」
黒いネコは外出中だろうか、部屋には白いネコしかいないみたいだった。相変わらず部屋の中は綺麗に掃除されている。白いネコは毛づくろいをやめて僕に質問した。
「どうしてデートしたこと知ってるの?」
デートのことを知られたぐらいでは恥ずかしくはないけれど、このネコには遠くのものを見る特殊能力すらも備えているのかと思ってしまったのだ。
「なんだか暇だったから外に出てみたの。そしたら、君が女の子とオシャレな建物に入っていくところを目撃したからね」
「見てたんだ」
白いネコは僕の周りをぐるっと一周する。なんだ、いつの間にか見られていたのか。黒いネコには見られていないことを信じたい。
「で、彼女かどうかヒントはあった?」
「んー、最初は違うと思ったけど案外僕の彼女はこういう人なのかもなって。でも、わからない。悩みの解決を優先することにしたからね」
「そうだったね。悩みはどんなもの?」
そう、彼女を探すことよりも悩みを解決することを優先すると昨日決めたのだ。白いネコも思い出したかのように口角が上がる。
「居場所をどうするかって話。認めてくれる人だけのところを居場所にするのか、皆のところでも居場所を作るのか。未雲っていう彼女はとある事情で不良ぽくなった後、そのまま続いているからクラスには戻る場所がないみたいなんだよね。とはいえ、認めてくれてる人もいて、毎日が鉛色というわけでもないから必ずしも必要でもないのかなと……」
「たしかに、居場所は大事よね。多い方が困ったときには助けてもらえるけど、それが逆に裏目に出るときもあるし。一緒に考えようか?」
「手伝ってくれるの?」
「うん」
白いネコは黒いネコと違って僕がノートに現状をまとめている際にいくつか自分の考えを提示してくれた。ただ、未雲のことは僕の方が知っている。彼女にとっての最適解は僕が導かなければいけない。
考えがまとまると、僕はベランダに出た。雲の数がだいぶ減っているのだろう、視線の先には隙間から顔を出す月。君はいつも姿を変えるけれど、どんな姿でも皆からは綺麗だねと存在を受け入れられている。人間はそういう風にはなれない。君が羨ましい。
月を人に見立てる僕は果たして疲れているか。月に手を伸ばしてもまだまだ届きそうにはない。それを知った僕は急に寒さを感じて部屋の中へ戻った。
そして寝る前に僕は天気を確認した。
明日、木曜日の天気は曇り。
曇りの世界、おやすみなさい。
また明日もよろしくね。



