本当の彼女を知る空は




「お帰り、学校はどうだった?」

 僕の部屋に入るなりそのように声をかけてくれたのは、白いネコだ。本棚が整えられていたり、だいぶ前に床にこぼしたジュースの跡が消えていたりと、どこか部屋がきれいになっているような気がする。学校に行っている間に白いネコが掃除でもしてくれたのだろう。気が利く。

「うん、陽っていう彼女がいたんだ。皆の憧れみたいな人で、僕のことも大切に思ってくれるとてもいい彼女だったよ。ただ、僕の彼女があんなにも明るい子だったかは怪しいけど」

「そうなんだ。でも、その割にはなんか浮かない顔ね」

「彼女、悩みがあるらしくて。青春って迷子になりやすいんだな……」

 僕はそのままベッドに勢いよくダイブした。仰向きになりながら天井を眺める。たしかに、陽の気持ちもわからないではない。とはいえ、陽がどの陽で生きていこうが、必ず失うものはある。どれを守りたいのかを考えることが一番の近道なのだろうか。誰か、教えてくれ。

「気づいたね。白いネコのせいで面白いゲームが台無しにされたから、それも付け足しておいたんだ。それぞれの世界の彼女が悩みを持っているようにね。もちろん、その悩みを解決するもしないも君の自由だけど、おそらく君は放っておけないだろうからね。なんてったって、全員が君の大切な彼女候補なんだから。君が本当の彼女を決めるよりもまずは大切なことなのかもしれないね」

「そうなんだよこのネコは!」

 僕の代わりに白いネコが怒ってくれた。この野郎、これは黒いネコのせいか。それによく見てみると、僕の机をかじった跡が目でわかるほど大きくなっている。おそらくそれもこの黒いネコのせいだろう。絶対いつか見合った制裁を受けてもらう。

「……あれ、お前は怒らないのか?」

 黒いネコは朝のような追いかけっこ展開を望んでいたのか、僕にそう尋ねる。しかし、僕は今、大事な考え事をしている最中なのだ。怒っている場合ではない。

「……ちなみにさ、その悩みは本物?」

「……ああ、本物の彼女は本当の悩みだよ。それ以外は空想だけど。ただ、一つ注意。仮に本物の彼女以外を選んだ場合、その悩みが本当になるから」

「なら、いいのかもな。とりあえず陽の悩みの解決を優先してみるよ」

 たしかに黒いネコの行動は目に余るものがあるが、本物の彼女の悩みは本当だし、その人以外であっても選んだ場合にはその悩みを持つ彼女になる。その人の本当の心の声を知らないまま彼女になるよりは何倍もましなのかもしれない。彼女を探す目的はあくまでサブ? という可能性すらもあり得る。



 日付が変わる直前、陽からメッセージが来た。

『今日はごめんね、あのことは気にしないで。こんな私がいやだったら、空斗くんは私を捨ててくれてもいいからね』

 と。

 まだ僕には陽の本当の悩みへの答えを出すことはまだできない。でも、陽が今送ってくれたメッセージになら返信できる。

『捨てたりはしないよ。今日は本当のことを話してくれてありがとう。おやすみ』

 と返信した。すると、陽は太陽の絵のスタンプを押してくれた。

 そして寝る前に僕は天気を確認した。

 明日、火曜日の天気は晴れ。

 晴れの世界、おやすみなさい。

 また明日もよろしくね。