本当の彼女を知る空は




「そうなのか。雨の世界でも活躍かよ」

「よかったよ。これで全員の悩みを解決できたよ」

 帰ってくるなり黒いネコが状況報告を求めてきたので、あまり機嫌を損ねさせるのはよくないと思い、簡単に雨の世界の彼女の悩み解決について話した。

「で、明日が最終日だけど誰にするか決まったのか? まだ明日の夜までは時間があるけどな」

「まだ決定的な決断はできないな……。でも、きっと僕はどの彼女を選んでもその後悔はしないと思う。逆に言えば誰もが僕の彼女にとしてありえると思う」

 おそらくこの人というのは一人だけ決めている。仮にそれが本当の彼女ではなかったとしても、僕はきっとは後悔しない。そう僕は心に言い聞かせていた。でも、そう決めるのはどこか怖い。

「なら大丈夫そうだね。明日の午後九時、私たちは君の傍に現れる。そしたら、君は生きる世界を一つ選んでね。選んだら、その世界に行けるよ。チャンスは一回。やり直しは効かないからね」

 白いネコは明日のことについて教えてくれた。あと時計の長い針が二周回る時間すらないと思うと、やはりどこか焦りの気持ちが表にも出てきそうになってしまう。

 ――何か僕は忘れていないか?

 ただ、本当にあの子なのか僕は確信が持てない。もしかしたら僕は重要な何かを見落としているのかもしれない。三人の彼女といた時に感じた本当の彼女を表すような声といったピースは、あれはいったい何だったのだろうか。幻だったのか。いや、とてもそうとは思えない。

「とありあえず明日の天気を確認するよ」

「そうだね」

「最後の天気は何か意外と重要だぞ」

 最後の日、明日の天気を確認するためにスマホでテレビをつけた。画面右上にあるテロップを見た瞬間に僕は一つ大事なことを忘れていることに気づいた。心臓の音が狂っているかと思うほど早くなった。

『明日は予報が変わりまして、雪が降る見込みです。時間によっては大雪となる場合もありそうです。交通にも影響が出る可能性がありますので、最新の情報をこまめに得るようにしてください』

 ――雪の世界、まだ出会ったことがなかった。

 これまで天気を晴れ、曇り、雨だけだと誤解していた。この地域ではその天気になることはほとんどないけれど、冬にはもう一つ大きな天気がある――雪だ。

 もしかしたら雪の世界の彼女が僕の本当の彼女なのかもしれない。

 忘れていたんだ。雪の天気を。なんで忘れていたのか。思わず机を叩いてしまった。痛みが襲ってくる。でも、自分を責めたところで何も変わらない。僕が迷子になってどうする。

 僕はノートを開いて今までのことを鉛筆を握りしめて書き散らした。どうやっても鉛筆を持つ手が震えてしまう。白いネコはそんな僕を見てそっと手を重ねてくれた。僕はそんなことをしてくれた白いネコにありがとうと言った。でも変わることはなかった。大丈夫だ、落ち着け。まだ一日ある。僕の彼女はきっと僕の手を握ってくれる。そう思うと急に眠気が襲ってきた。明日のためにもここは無理せず寝た方がよさそうだ。

 明日、日曜日の天気は雪。

 雨の世界、おやすみなさい。

 雨月、バイバイ。もしくは、今後もよろしくね。

 雪の世界の彼女は一体、どんな人なんだろうか。