五時を過ぎてくると観光名所も閉まって見るところがない。
町の北側にある砂浜に出てみた。
穏やかな波が打ち寄せる白い砂浜に沿って、虹の松原と呼ばれる松林が連なっている。
白砂青松という言葉そのままの風景に唐津城がそびえ、ようやく傾きかけた日差しを受けて燃え上がるように輝いている。
急に頭がぼんやりして風景から切り取られたような感覚にとらわれる。
時の流れから自分だけが抜け出して、永遠にこの景色を眺めていることを許されたみたいな気がしてくる。
飽きないなぁ。
完璧だよ。
ここの人たちは毎日こんな風景を眺めながら生活しているんだな。
ずるくはないけど、なんかうらやましいな。
全然知らない街なのに、なんだかものすごく懐かしい感じがするし。
――あ。
知らない街を勝手に故郷みたいに奪い取ろうとしてる私の方がずるいのか。
ごめんなさい。
私は通りすがりの旅人でした。
私は心の中でお辞儀をして海岸から立ち去った。
日が傾いたとはいえ、まだ明るい。
私は南口側にもどって、宿泊先を目指した。
ホテルの近くにコンビニがあった。
もちろん今時、北海道以外ローカルコンビニなんてあるわけないから、珍しくもない全国チェーンだ。
私は明るい店内に足を踏み入れた。
店内には私以外にお客さんはいなくて、店員さんも、出てきているのはお団子ヘアの女性店員一人だけだった。
並んでいる品物も特に九州らしい何かがあるわけでもない。
ペットボトルのそば茶と四角い紙パックのオレンジジュースをカゴに入れ、アイスでも買おうかなと歩いていたら、お弁当コーナーでふと足が止まった。
《ガチ中華始めました》
へえ、なんかおもしろそう。
《冷やし中華》と見間違えたかと思ったけど、棚一面が真っ赤っかだった。
辣子鶏って唐揚げと唐辛子の炒め物なんか、唐辛子の方が多いじゃん。
辛いのは苦手じゃないけど、さすがにこれは無理だな。
あ、魯肉飯がある。
これなら大丈夫かもと、手に取ってみると、八角と花椒を大量に使っているらしい。
ああ、八角って美月と台湾に行ったときにほとんどの料理に入ってたっけ。
あの独特の強い香りが、そんなに得意じゃないんだよね。
ていうか、私、ガチ中華に向いてないのかも。
いや、ここはあえてチャレンジでしょ。
ああ、でも、お肉プラスお肉だな。
ムフフ、こんなときは、すべての罪を浄化してくださるサラダを追加でオールオッケー。
辣子鶏と魯肉飯に《コリコリ食感を楽しむ中華風サラダ》を籠に入れてレジに行くと、さっき品出しをしていた若い女性店員さんが来た。
「温めますか?」
「はい、お願いします」
会計を済ませ、温め終わった品物を受け取り、お店を出ようとしたときだった。
「うち、十時過ぎだと値引きシール貼るんで」
え?
「よかったら利用してください」
「ああ、はい、どうも」
なんだろう。
パンツスーツだから、ビジネスホテルの長期滞在者と当てられちゃったのかな。
逆に、ちょっと通いにくくなっちゃうんだけどな。
でもまあ、ホテルの最寄りだから、また来ますけどね。
町の北側にある砂浜に出てみた。
穏やかな波が打ち寄せる白い砂浜に沿って、虹の松原と呼ばれる松林が連なっている。
白砂青松という言葉そのままの風景に唐津城がそびえ、ようやく傾きかけた日差しを受けて燃え上がるように輝いている。
急に頭がぼんやりして風景から切り取られたような感覚にとらわれる。
時の流れから自分だけが抜け出して、永遠にこの景色を眺めていることを許されたみたいな気がしてくる。
飽きないなぁ。
完璧だよ。
ここの人たちは毎日こんな風景を眺めながら生活しているんだな。
ずるくはないけど、なんかうらやましいな。
全然知らない街なのに、なんだかものすごく懐かしい感じがするし。
――あ。
知らない街を勝手に故郷みたいに奪い取ろうとしてる私の方がずるいのか。
ごめんなさい。
私は通りすがりの旅人でした。
私は心の中でお辞儀をして海岸から立ち去った。
日が傾いたとはいえ、まだ明るい。
私は南口側にもどって、宿泊先を目指した。
ホテルの近くにコンビニがあった。
もちろん今時、北海道以外ローカルコンビニなんてあるわけないから、珍しくもない全国チェーンだ。
私は明るい店内に足を踏み入れた。
店内には私以外にお客さんはいなくて、店員さんも、出てきているのはお団子ヘアの女性店員一人だけだった。
並んでいる品物も特に九州らしい何かがあるわけでもない。
ペットボトルのそば茶と四角い紙パックのオレンジジュースをカゴに入れ、アイスでも買おうかなと歩いていたら、お弁当コーナーでふと足が止まった。
《ガチ中華始めました》
へえ、なんかおもしろそう。
《冷やし中華》と見間違えたかと思ったけど、棚一面が真っ赤っかだった。
辣子鶏って唐揚げと唐辛子の炒め物なんか、唐辛子の方が多いじゃん。
辛いのは苦手じゃないけど、さすがにこれは無理だな。
あ、魯肉飯がある。
これなら大丈夫かもと、手に取ってみると、八角と花椒を大量に使っているらしい。
ああ、八角って美月と台湾に行ったときにほとんどの料理に入ってたっけ。
あの独特の強い香りが、そんなに得意じゃないんだよね。
ていうか、私、ガチ中華に向いてないのかも。
いや、ここはあえてチャレンジでしょ。
ああ、でも、お肉プラスお肉だな。
ムフフ、こんなときは、すべての罪を浄化してくださるサラダを追加でオールオッケー。
辣子鶏と魯肉飯に《コリコリ食感を楽しむ中華風サラダ》を籠に入れてレジに行くと、さっき品出しをしていた若い女性店員さんが来た。
「温めますか?」
「はい、お願いします」
会計を済ませ、温め終わった品物を受け取り、お店を出ようとしたときだった。
「うち、十時過ぎだと値引きシール貼るんで」
え?
「よかったら利用してください」
「ああ、はい、どうも」
なんだろう。
パンツスーツだから、ビジネスホテルの長期滞在者と当てられちゃったのかな。
逆に、ちょっと通いにくくなっちゃうんだけどな。
でもまあ、ホテルの最寄りだから、また来ますけどね。


