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翌日の日曜日は朝から快晴だったので、美月に頼まれていた唐津焼のお皿を糸島まで見に行くことにした。
唯一のリアルな友達だから大事にしないとね。
電車で三十分、家族連れで賑わう電車に揺られて糸島に到着。
ほとんどのお客さんは博多方面の電車に乗り換えてしまい、糸島目当ての観光客はあんまりいなかった。
駅前に唐津街道の国道があり、そこを越えて道を一本入ったところが旧街道で、古い家並みが残されている。
古民家を改装した抹茶カフェや、土蔵をリノベしたレストランなど、おしゃれなお店が並ぶ通りは、福岡の方から来る観光客が多いらしく、閑散とした駅前とは別世界のように賑わっていた。
そんなお店を一軒一軒のぞきながら歩いていたら、唐津で教えてもらった雑貨屋さんを見つけた。
糸島の物産を扱うそのお店は、カフェが併設されていて、コーヒーのいい香りに包まれていた。
お目当ての粉引のお皿はすぐに見つかった。
縁取りされた平らなお盆型のお皿がちょうどステーキを載せるのにいい大きさだった。
美月に写真を送ったら、すぐに返事が来た。
《ついでにステーキ肉も送って》
ハイハイ……ツッコんであげないよ。
配送の手配をしてお店を出たら、八角とごま油の香りがしてきた。
匂いをたどって角を曲がると、砂利を敷いた空き地にキッチンカーが二台並んでいた。
赤い看板に黄色い文字で《胡椒餅》《葱油餅》と書かれていて、車体には手書きで《ガチ中華》とペイントされている。
全然糸島とは関係がないんだろうけど、私はよほどガチ中華に縁があるらしい。
もうこれは運命でしょ。
胡椒餅は焼いた肉まんみたいな物だし、葱油餅はお好み焼きだから、そんなに辛くはないだろうし、お昼にちょうどいいかも。
どっちから注文しようかなと見比べていたら、店員さんに左右から同時に声をかけられた。
「どっちからでもどっちも注文できますよ」
「私ら、兄弟ね」
あ、そうなんだ。
右側は眼鏡をかけた痩せた人で、左側はちょっと太めのコメディアンみたいな人。
右側の方に別のお客さんが行ったので、私は左側で注文することにした。
「胡椒餅と葱油餅を一つずつください」
「煎餅果子もどうですか」
ジェンビン……何?
「中華のクレープ、具材たっぷり巻いてお昼にいい」
「あ、じゃあ、それもお願いします」
「パクチーはオッケー?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、サービスたっぷりね」
いや、苦手ではないってだけで、そんなに好きってわけでもないんですけど。
日本語の『大丈夫』って難しい言葉だよね。
でもまあ、麻辣羊鍋を完食した私は、もはや怖いものなしだ。
受けて立とうじゃありませんか。
と、待っている間に周囲を見回していたら、建物の間にこんもりとした山が見えた。
山というより丘といった感じだけど、海も近いから見晴らしが良さそうだ。
スマホで調べたら、可也山というらしく、一時間ほどで登れる地元小学生定番の遠足コースのようだった。
せっかくテイクアウトするんだから、景色のいいところで食べたいな。
もりもり食べる分、カロリー消費もしたいし。
急な思いつきだけど、天気もいいし、元々歩くつもりだったから、ちゃんとウォーキングシューズも履いてきている。
よし、行ってみよう。
昔の人も言ってたじゃない、『そこに山があるから』って。
ほかほかの中華セットを受け取ると、通りすがりのドラッグストアでそば茶のペットボトルを調達して早速山に向かう。


