アラサー塾講師の出張メシ 夜のお供はコンビニガチ中華ですけど何か?

 左に旋回した飛行機の窓から島が見える。

 細い砂州でつながった島の向こうには高層ビルが並び、その先には丸いドームも視界に入った。

 ――ああ、これが金印が見つかった場所か。

 歴史の教科書に出てくる志賀島だ。

 島といっても、今では道路でつながっていて、週末には賑わいを見せる福岡市民の憩いの場所らしい。

 飛行機はさらに左へ向きを変え、福岡市街の奥に空港が見えてきた。

 でも、高さを保ったまま、空港の右側を通過してしまう。

 あれ、なんで?

 と、思ったら、住宅街に堤防みたいな土手が見えてきた。

 その先には新緑まぶしい森にたたずむ大きな神社が見える。

 土手が教科書に出てくる『水城』で、神社はあの受験の神様で有名な『太宰府天満宮』だ。

 白村江の戦いで負けた後に天智天皇が作らせたという水城は知識としては知っていたけど、実物を見るのは初めて。

 学校で習ったときは、ただの土手が何の役に立つのかと軽く考えていたけど、土手の前には堀もあるから、周囲のマンションくらいの高低差があって、想像していたより何倍も大きい。

 街全体を囲う城壁みたいなものだったのか。

 これならたしかに土手じゃなくて『城』だわ。

 やっぱり、教科書で読んだだけじゃ分からないことってあるよね。

 百聞は一見にしかずだな。

 と、空から太宰府天満宮に手を合わせていると、飛行機は最後にもう一度大きく左に旋回し、ようやく福岡空港の滑走路に着陸した。

 風向きの関係でアプローチが南からに変更になったんだろうけど、ただで福岡市街の遊覧飛行を楽しませてもらったみたいで、なんかお得な気分。

 私は地下鉄の駅に降りて、市街地方面の電車に乗った。

 十分もしないうちに博多駅について乗客が大きく入れ替わる。

 こんなに中心部と近い空港ってなかなかないなと思っているうちに繁華街の中洲や天神を通り過ぎ、ちょっと居眠りしていたら、いつの間にか電車は地上に出て、海沿いを走っていた。

 邪馬台国のことを記した魏志倭人伝にも『伊都国』として出てくる糸島でいったん電車を乗り換え、さらに先へ進む。

 空港から一時間半、海沿いにそびえる大きなお城が見えてきた。

 ――あれが唐津城か。

 佐賀県唐津市。

 ここが今日から一ヶ月、私が働く街だ。