Love After The Loop

 一睡もできないまま迎えた、はじめての『23日』の朝。
 登校した俺は教室の扉を開けた瞬間、息を呑んだ。

 今までとは違う、明らかに新鮮な教室の空気。
 聞こえる雑談も、知らない物で溢れていた。今までは、毎日同じ話題を同じように話していたのに、明らかに違う。

(本当に、23日なんだ)

「郁真、昨日は大丈夫だったか?」

 その言葉に、勢いよくそちらを見る。

 そこに、郁真がいた。

 自分の席に座り、友達と他愛もない様子で話しているあいつの姿。姿を見せたことに安堵したのも束の間、俺が近づこうとすると郁真は露骨に視線を外し、立ち上がって教室を出て行ってしまった。

__避けられている。

 自然風を装っているかは知らないが、あからさまだ。その態度にイラっとしたが、正直折れてやるわけがないので、何度だって接触を試みた。
 それでも、授業中も休み時間も、あいつは一度たりとも俺と目を合わせようとしなかった。一昨日までのあの甘い体温も熱い眼差しも、全て幻だったのではないかと疑いたくなるほどの徹底した拒絶。

 耐えきれなくなった俺は昼食のタイミングを狙い、郁真の腕を力任せに掴み、空き教室へと半ば強引に連れ込んだ。

「離せよ、唯斗」
「離すわけねぇだろ!なんで避けるんだよ!昨日の朝だって、約束したろ……っ!22日の告白をもう1回してくれるって、ループを抜けるために2人でやり直そうって……!」

 喉を焼くような叫びをぶつける俺に対し、郁真は冷ややかな目を向けるだけだった。

「何言ってるんだよ。ループ?22日の告白?」
「とぼけるなよ!あんなに……っ」
「おい、マジで何の話?お前、さっきからおかしいよ」

 あきれ返ったような、困惑したような声。
 けれど、俺の手を振り払おうとする郁真の指先が微かに震えているのが見えた。俺と目を合わせまいと、視線が泳いでいる。

(こいつ、嘘ついてやがる)

 忘れたんじゃない。
 全部覚えている癖に、わざと『記憶がないフリ』をしている。

「…郁真、嘘だろ。お前、本当は、」
「しつこいんだよっ!!」

 強い力で腕を振り払われた。いつもとは違う郁真の振る舞いに呆気に取られてしまう。
 郁真は悲痛な面持ちで俺を一瞬だけ睨みつけると、そのまま一度も振り返ることなく、逃げるように走り去ってしまった。

 取り残された俺は、追いかける足を動かすことすらできなかった。
 これ以上追えば、2人を繋ぎ止めていた最後の糸すら切れてしまう気がして・・・ただ遠ざかっていくあいつの背中を呆然と見送ることしかできなかった。