Love After The Loop

 翌朝、薄明るいカーテン越しに差し込む光の中で目が覚めた。
 まぶたを開けると、すぐ目の前でじっと俺を見つめていた郁真と視線がぶつかった。そこに浮かんでいたのは、昨日までの絶望や痛々しい迷いなどではなく、深く穏やかな愛おしさと優しさだった。

「……おはよう、唯斗」
「ん、おはよう」

 互いに少しだけ照れくさそうに微笑み合い、布団の中でそっと指を深々と絡め合わせる。
 人差し指にはめられた銀色のリングが触れ合い、カチャリと小さな音を立てた。そして俺たちは、今日という終わりの始まりに、昨日交わした大切な約束をもう一度確かめ合った。

「放課後、教室で集合な。22日の告白をもう1回してくれ」
「…ああ。今度こそ逃がさないから、ちゃんと覚悟しとけよ」

 冗談めかして笑う郁真の声には、これまでにない確かな熱と自信が宿っていた。
 きっと、長かった『22日』のループはこれで終わる。正真正銘の想いを重ね合わせ、俺たちはこの歪んだ迷宮から抜け出すんだ__そう信じて疑わなかった。


 けれど、そう上手くはいかなかった。


 放課後、約束した誰もいない夕暮れの教室で、俺はずっと1人で郁真を待っていた。正真正銘の22日に倣うために教室から一緒に帰路に着くはずだった。

(遅いな…)

 そういえば、昼から郁真は授業に出なくなっていた。
 きっとどこかでサボっているのだろうと放置していたが、ここまで姿を現さないとなると、段々不安になってくる。胸を鋭く刺す嫌な予感を抑えきれず、俺は誰もいなくなった廊下を駆け抜け、職員室へ飛び込んで担任の先生に郁真の行方を尋ねた。

 そこで返ってきたのは、頭が真っ白になるような思いも寄らない言葉だった。

「郁真か?あいつなら体調不良ってことで、昼過ぎに1人で早退したぞ。何でも親御さんは旅行中らしいな。お前に何も言ってなかったか?」

__そう、たい……?

 頭を強烈な鈍器で殴られたような衝撃が走り、視界がぐらりと揺れた。
 お礼すら言わずに学校を飛び出し、心臓が破裂しそうな勢いで夢中で郁真の家へと向かった。

 しかし、チャイムを鳴らしても誰も出ない。
 何度鳴らしても、何度扉を叩いても、何度声を張り上げても、郁真は出てこない。

「……なんで……っ」

 震える指先で携帯を取り出し、何度も電話をかける。しかし「お掛けになった電話は電波の届かない場所にあるか…」という無機質なアナウンスが冷たく繰り返されるだけ。

「郁真!おい、郁真……!!なんでだよ……!」

 喉が焼けつくほど何度も名前を叫びながら、繰り返し扉を叩いた。
 けれど、結局郁真が扉を開けてくれることはなかった。