キスを交わすことが当たり前になってから、郁真の口から「好き」という言葉がこぼれる頻度も明らかに増えていた。それはループに巻き込まれる前に聞いていた回数を明らかに上回るものだったが、以前のように自分を苦しめる言葉ではなくなっていた。
「好きだよ、唯斗」
「…またそれかよ」
「唯斗は?俺のこと好き?」
「………好きだよ」
「ふふっ、ありがとう」
布団の中で、不意に落とされるその甘い言葉。
それが友達としての親愛なのか、それとも恋人に向ける独占欲なのか。本当の意味なんて分からない。確かめる勇気もないから、ただ自分の都合のいいように解釈して心の隙間を埋め合わせる。そのお返しと言うように、俺も郁真の望む言葉を返すようになっていた。
付き合っているわけでもない。
名前のつかない、歪で不確かな関係。
それでもいい気がした。
ひと時の甘い夢に縋ったって、それを咎める人はここにはいないのだから。
思わず小さく自嘲気味に笑うと、暗闇の中で郁真の動きがピタリと止まった。
「どうかした?」
不審に思ったのか、郁真が上体を起こして覗き込んでくる。その気配に驚いて視線を逸らした。
「なんでもない。ただ、このループ中なら何しても許されるんだな、って思ったんだよ」
「何をしても、許される、?」
「だってそうだろ。俺たちの…その、キスだって、誰にも指摘されない。22日がループすれば、綺麗さっぱり無かったことになるだろ」
郁真はわずかに眉をひそめた。その瞳の奥が、暗がりの中でも異様なほどに黒く沈んでいるように見えてしまったが、その変化にすぐには気づけなかった。郁真が浮かべる、複雑でどこか冷えた表情にも。
「……なら、別にいいよな」
「え?」
聞き返す間もなかった。
次の瞬間、先ほどまでのじゃれつきとは違う、明らかにこちらの自由を奪う押し倒され方をされた。違和感を感じて抵抗しようにも、上手い具合に圧し掛かられてしまう。
「っ……!」
さらに逃げ場を塞ぐように、郁真が力を込めた。暗闇の中、至近距離で見下ろしてくるその瞳は、いつもの優しげな色を一切失っていた。ぎらつくほどに据わった、執着の色だけが浮かんでいる。
「い、くま……?」
名前を呼ぶ声が、わずかに震えた。
恐怖を覚えた。いつもは穏やかな親友の仮面が完全に剥ぎ取られ、底知れない闇を覗かされたような寒気が背筋を駆け抜ける。
どうにか腕だけでも動かそうとしたが、郁真の片手が俺の両手を力任せに頭の上へと押さえつける。
そして、抵抗を許さないまま、もう片方の手が裾から滑り込んできた。
「っ……、ちょ……!」
冷やりとした手指が、熱を帯びた素肌に直接触れる。
ビクリと跳ねた俺の身体を抑え込むように、郁真が耳元に顔を寄せた。低く、掠れた声が鼓膜を直接揺らす。
「ループ中なら何しても許されるだよな?綺麗さっぱり無かったことになるんだろ?」
ついさっきの俺の言葉を呟きながら、郁真はクツクツと笑った。
拒むことも、逃げることもできない。
その歪んだ独占欲の熱に呑み込まれながら、俺はただ、背筋が凍るような恐怖と、どうしようもない甘さに支配されていくのを感じていた。
「好きだよ、唯斗」
「…またそれかよ」
「唯斗は?俺のこと好き?」
「………好きだよ」
「ふふっ、ありがとう」
布団の中で、不意に落とされるその甘い言葉。
それが友達としての親愛なのか、それとも恋人に向ける独占欲なのか。本当の意味なんて分からない。確かめる勇気もないから、ただ自分の都合のいいように解釈して心の隙間を埋め合わせる。そのお返しと言うように、俺も郁真の望む言葉を返すようになっていた。
付き合っているわけでもない。
名前のつかない、歪で不確かな関係。
それでもいい気がした。
ひと時の甘い夢に縋ったって、それを咎める人はここにはいないのだから。
思わず小さく自嘲気味に笑うと、暗闇の中で郁真の動きがピタリと止まった。
「どうかした?」
不審に思ったのか、郁真が上体を起こして覗き込んでくる。その気配に驚いて視線を逸らした。
「なんでもない。ただ、このループ中なら何しても許されるんだな、って思ったんだよ」
「何をしても、許される、?」
「だってそうだろ。俺たちの…その、キスだって、誰にも指摘されない。22日がループすれば、綺麗さっぱり無かったことになるだろ」
郁真はわずかに眉をひそめた。その瞳の奥が、暗がりの中でも異様なほどに黒く沈んでいるように見えてしまったが、その変化にすぐには気づけなかった。郁真が浮かべる、複雑でどこか冷えた表情にも。
「……なら、別にいいよな」
「え?」
聞き返す間もなかった。
次の瞬間、先ほどまでのじゃれつきとは違う、明らかにこちらの自由を奪う押し倒され方をされた。違和感を感じて抵抗しようにも、上手い具合に圧し掛かられてしまう。
「っ……!」
さらに逃げ場を塞ぐように、郁真が力を込めた。暗闇の中、至近距離で見下ろしてくるその瞳は、いつもの優しげな色を一切失っていた。ぎらつくほどに据わった、執着の色だけが浮かんでいる。
「い、くま……?」
名前を呼ぶ声が、わずかに震えた。
恐怖を覚えた。いつもは穏やかな親友の仮面が完全に剥ぎ取られ、底知れない闇を覗かされたような寒気が背筋を駆け抜ける。
どうにか腕だけでも動かそうとしたが、郁真の片手が俺の両手を力任せに頭の上へと押さえつける。
そして、抵抗を許さないまま、もう片方の手が裾から滑り込んできた。
「っ……、ちょ……!」
冷やりとした手指が、熱を帯びた素肌に直接触れる。
ビクリと跳ねた俺の身体を抑え込むように、郁真が耳元に顔を寄せた。低く、掠れた声が鼓膜を直接揺らす。
「ループ中なら何しても許されるだよな?綺麗さっぱり無かったことになるんだろ?」
ついさっきの俺の言葉を呟きながら、郁真はクツクツと笑った。
拒むことも、逃げることもできない。
その歪んだ独占欲の熱に呑み込まれながら、俺はただ、背筋が凍るような恐怖と、どうしようもない甘さに支配されていくのを感じていた。



