Love After The Loop


「お先―」

 脱衣所のドアが開き、湯気と一緒に郁真が出てきた。
 濡れた髪を雑にタオルで拭きながら、郁真は借りていたTシャツの首元をパタパタと煽って「あーさっぱりした」と息を吐く。風呂上がり特有の甘いシャンプーの匂いと熱気が、リビングの静かな空気にふわりと広がった。

 この瞬間だけは何度目の当たりにしても慣れない。変な気分を振り払うように、俺はソファーから立ち上がった。

「じゃ、俺も入ってくるわ」
「おー。バスタオル、洗面所の棚の2枚目使ってね」
「ん、ありがと」

 そんな慣れたやり取りを交わし、俺は浴室へと向かった。
 温かいシャワーを浴びながら、今日1日のこと、そして何度も繰り返してきた『22日』の記憶を頭の中で整理する。湯船に浸かって強張った身体をほぐし、火照った身体をタオルで拭ってから、郁真に借りた少し大きめのTシャツを着込んだ。


 濡れた髪の毛の水滴をタオルでしっかりと拭き取ってからリビングへ戻ると、郁真はすでにすっかりくつろいだ様子で、ソファーの上に横長に寝転がっていた。

「…だらけてんな~」

 俺が呆れた声をかけると、郁真はスマホから目を離さないまま口を開いた。

「俺ん家だしいいじゃん」
「でも、俺が座る場所ないんだよ。ちょっと寄ってくれ」
「んー…はい、これでどう?」

 そう言って郁真は身体を少しだけ縮め、自分のすぐ隣の空きスペースをぽんぽんと手で叩いた。

「よし分かった。踏んだらごめんな」
「んふふ、そう言って踏まないくせに」

  もう、こんな強引で遠慮のないスキンシップにも、すっかり慣れてしまっていた。

  俺は諦めて溜息を吐き、郁真が示した狭いスペースへと腰を下ろす。
  ストンと隣に座った瞬間、必然的にぴたりと触れ合った。郁真の体温と、風呂上がりのシャンプーの香りがダイレクトに伝わってくる。

 最初の頃なら、ただ肩が触れただけで心臓が破裂しそうなくらい跳ね上がっていた。呼吸の仕方すら分からなくなって、全身をガチガチに強張らせていたはずだ。

 今は……まあ、正直に言えば、やっぱり少しだけ緊張はする。
 鼓動が早くなるのを抑えきれはしないけれど、それでも相手に悟られないよう、気にしないふりくらいは上手くできるようになっていた。

 俺は触れ合う腕の温もりにそっと意識を逃がしながら、見慣れたテレビの画面へと視線を向けた。