2人で適当に夕食を済ませた頃には、窓の外はすっかり深い夜の闇に包まれていた。
郁真の家の広々としたリビングには、ローテーブルの上に広げたままのルーズリーフと飲みかけのペットボトル。それから、途中のコンビニで買ったスナック菓子の袋がいくつか並んでいる。
「…はあ、疲れたな」
俺は思考を放棄するように、リビングの柔らかいソファへと深く身体を沈めた。
「同感。頭使いすぎて知恵熱出そう」
向かい側に座っていた郁真も、同じように背もたれに身体を丸ごと預け、天井を仰いだ。
「でもさ、指輪が消えずに残ったこと自体は、やっぱりめちゃくちゃデカい進歩だろ」
「それはそう」
俺は持ち上げた自分の左手を見つめる。そこには、鈍い輝きを放つ銀色のリングが確かに存在していた。消えると思い込んでいた小さな金属が、今朝目覚めた時には確かに俺の手に残ってくれていた。この歪んだ世界の中で、それだけが唯一の救いであり、ほんの少しだけ差し込んだ確かな希望だった。
「少なくとも、何らかの条件を満たせばループを超えて痕跡を残せるって証明されたわけだしな」
郁真が自分の左手の人差し指を眼前まで持ち上げ、指輪の感触を慈しむように確かめながら言った。
「だったら、いつかループそのものを壊せる日が来るかもしれない」
「そうだな」
俺も小さく頷いた。根拠なんてどこにもないけれど、郁真がそう言ってくれるだけで、不思議と本当に未来を引き寄せられるような気がした。
それからしばらく、2人の間に心地よい沈黙が流れた。
小さめの音量でつけっぱなしにされたテレビのニュース音声だけが、静まり返ったリビングに穏やかに響いている。
「なあ、唯斗」
「ん?」
「…ループ、一緒に抜け出そうな」
視線を向けると郁真はソファに身を預けたまま、どこか照れくさそうにこちらを見ていた。
「ああ、そうだな」
それだけの、なんてことのない短い会話だった。
だけど、そのまっすぐで優しい声が胸の奥にじんわりと染み込んできて、俺の心臓を酷く愛おしく跳ねさせた。
郁真の家の広々としたリビングには、ローテーブルの上に広げたままのルーズリーフと飲みかけのペットボトル。それから、途中のコンビニで買ったスナック菓子の袋がいくつか並んでいる。
「…はあ、疲れたな」
俺は思考を放棄するように、リビングの柔らかいソファへと深く身体を沈めた。
「同感。頭使いすぎて知恵熱出そう」
向かい側に座っていた郁真も、同じように背もたれに身体を丸ごと預け、天井を仰いだ。
「でもさ、指輪が消えずに残ったこと自体は、やっぱりめちゃくちゃデカい進歩だろ」
「それはそう」
俺は持ち上げた自分の左手を見つめる。そこには、鈍い輝きを放つ銀色のリングが確かに存在していた。消えると思い込んでいた小さな金属が、今朝目覚めた時には確かに俺の手に残ってくれていた。この歪んだ世界の中で、それだけが唯一の救いであり、ほんの少しだけ差し込んだ確かな希望だった。
「少なくとも、何らかの条件を満たせばループを超えて痕跡を残せるって証明されたわけだしな」
郁真が自分の左手の人差し指を眼前まで持ち上げ、指輪の感触を慈しむように確かめながら言った。
「だったら、いつかループそのものを壊せる日が来るかもしれない」
「そうだな」
俺も小さく頷いた。根拠なんてどこにもないけれど、郁真がそう言ってくれるだけで、不思議と本当に未来を引き寄せられるような気がした。
それからしばらく、2人の間に心地よい沈黙が流れた。
小さめの音量でつけっぱなしにされたテレビのニュース音声だけが、静まり返ったリビングに穏やかに響いている。
「なあ、唯斗」
「ん?」
「…ループ、一緒に抜け出そうな」
視線を向けると郁真はソファに身を預けたまま、どこか照れくさそうにこちらを見ていた。
「ああ、そうだな」
それだけの、なんてことのない短い会話だった。
だけど、そのまっすぐで優しい声が胸の奥にじんわりと染み込んできて、俺の心臓を酷く愛おしく跳ねさせた。



