Love After The Loop


「やっぱり、ちゃんと存在してる……」

 俺たちは誰もいない放課後の空き教室で、机の上に並べた2つの指輪を食い入るように見つめていた。
 どれだけ目を擦り、手で触れて確かめても、そこには確かに冷たい金属の質感が存在している。

 何十回、何百回と繰り返してきた絶望的な日常の中で、初めて訪れた奇跡のような変化。正直、泣きそうになるほど嬉しかった。

「でも、なんでこの指輪だけが巻き戻らなかったんだ?」
「…俺たち2人に関わるものだったから、とか?」

 郁真が顎に手を当て、探るように呟く。

「仮説としては一応筋は通ってる。現に俺たちしかループを認知できていないわけだし」
「可能性としては十分あり得るな」
「うん」

 郁真は机の上に並んだ指輪を興味深そうに見つめ、深く頷いた。

 まだ何も分からない。
 それでも、俺たちの心は今までと違ってどこか穏やかで、希望に満ちていた。

 少なくとも、初めてこの不条理なループの世界に風穴を開けることができたのだ。
 だったら、俺たちが次にやるべきことは1つしかない。

「じゃあ、可能性のあることを片っ端から試そうぜ。時間なら無限にあるんだ」
「賛成」

 郁真は鞄からノートとルーズリーフを取り出し、ペンを走らせ始めた。
 今までのことも含め、綺麗にまとめられているソレを目で追いながら、

「は?」
「え、」
「ちょ、そういえば、、そのルーズリーフもループしてねーじゃん!!!」

 思わず立ち上げながら指させば、呆然とした郁真が手元のルーズリーフに視線を落とした。
 ファミレスでまとめた時の内容も、こうしてあの日のままに綺麗に残っている。

 気づかなかっただけで、ループが綻んでいた部分はあったんだ。

「っ、本当だ」
「これでほぼ確実だろ。ループの条件には少なからず『俺たちだけに関わること』が関係してる。他には、何があると思う?」
「俺たち2人だけが知ってる秘密、とか?」
「秘密、か……」

 郁真は腕を組んで「うーん」と唸る。

 俺たち2人だけの、誰も知らない秘密。
 真っ先に思い当たるのは、__あの正真正銘の『最初の22日』に起きた、告白の件。

 一瞬、その記憶が脳裏をかすめたが、俺はとっさに口を噤んだ。

 今更その話を引っ張り出して、気まずい空気になってしまうのが怖かった。
 ループの序盤、一度だけファミレスでその件に触れたことがあったが、郁真には明らかに話題をはぐらかされた。数えきれないほど同じ時間を繰り返す中で、郁真は忘れてしまったかもしれない。もしそうなら、あの告白を今でも大切に覚えているのは俺だけで、

 ・・・そう思うと胸が苦しかった。

「うーん、難しいな…」

 郁真が頭を抱えて髪をくしゃくしゃと掻く。

(まさかな)

 結局、この仮説を口にすることはできなかった。