Love After The Loop

 翌朝、けたたましく目覚ましが鳴り響くより先に目が覚めた。

「……今日こそ」

 縋るような思いで枕元のスマートフォンを手に取る。バックライトが灯り、画面に表示された日付は『22日』。

「…だよな」

 知っていたはずなのに、やっぱり小さなため息が漏れた。

 それでも、胸の奥に広がる感覚は昨日までとは少し違っていた。
 
 今日は学校へ行かない。

 たったそれだけのことが、すり減っていた心をほんの少しだけ軽くしてくれた。いつもなら億劫になりながら袖を通す紺色の制服には目もくれず、クローゼットから適当な私服を引っ張り出して着替える。

 朝飯を適当に胃に流し込み、家を出た。
 駅へ向かう通学路を歩きながら、ポケットの中の時計を何度も確認する。

 昨日までなら、今頃は重い足取りで学校の校門をくぐっていた時間だ。

 けれど、今日は違う。
 通勤通学ラッシュを終えて多少空いた平日の駅前には、すでに私服姿の郁真が立っていた。

「おっ、早いじゃん」
「お前もな」

 いつもより幾分か明るい笑顔を浮かべる郁真を見て、言葉には出さず、そっと胸を撫で下ろす。

 昨日は、こちらが半ば無理矢理に話を進めてしまったから、正直なところ少しばかり不安だった。もしかしたら、郁真は乗り気ではなかったのかもしれない。そんな考えが、どこかに引っかかっていた。

 けれど、今こうして目の前にいる郁真の表情を見れば、それも杞憂だったのだとわかる。こいつも、少しは楽しみにしてくれていたのだ。
 
 そう思うと、張り詰めていたものが、ゆっくりとほどけていくような気がした。

「で、どこ行くの?」
「唯斗くん特製、電車ぶらり途中下車の旅はどうだ?」
「……やっぱり無計画かよ」
「まあまあ、いいじゃん」

 改札を抜け、やってきた適当な電車に揺られるように乗り込んだ。

 どこへ行くかも、何をするのかも決めていない。
 ただ俺たちは、学校とは反対方向に向いていく。

 それだけだった。