それはおそらく今の仕事だってそうなんだろう。
いちおう旅行ライターとして生計が成り立っていると説明すると、やはり言われるのだ。
『楽でいいね』
『趣味と実益が一致するなんてうらやましいよ』
でもそれは誰もが利用できる旅行サイトに書き込みをしていただけで、他にもたくさんの人が同じことをやっていて、私一人が特別だったわけじゃない。
ああ、逆か。
特別じゃない私が条件のいい仕事をしているのが気に障るのか。
でも、それは私のせいじゃない。
この人の彼女さんだって、行ける場所があったから選んだだけ。
話が途切れたところで、私は軽く会釈して車に乗り込んだ。
彼は敬礼するみたいに窓越しに手を上げると、背中を向けて去っていった。
私もエンジンをかけて駐車場を出る。
今日の宿は来た道を一時間半ほど戻った浦河というところだ。
でも、まだ全然明るいから、東の方に行けるだけドライブしてみようかな。
来た道と反対方向に海沿いを走る。
東西で向きは逆のはずなのに、打ち寄せる波の激しさは変わらない。
私は運転しながらいつの間にか亀のように首をすくめていた。
途中の展望台に車を止めたりしながらドライブを楽しんでいるうちに、ようやく日が傾いてきた。
私は来た道を戻って宿へ向かった。
襟裳岬を通過し、最初の街まで来たところで、コンビニがあったので寄ることにした。
北海道ならどこの街にでもあるケイコーマートだ。
ここのお弁当やお惣菜は地元食材をふんだんに使っていて普通のコンビニのレベルを超えているし、店内調理のテイクアウトなんか、そこらへんのレストランよりも実はよっぽどおいしいくらいだ。
前回はがっつりカツ丼をホテルの部屋で食べたんだけど、今回は何にしようかな。
と、車を出たら、店から見覚えのある人が出てくるところだった。
さっき襟裳岬にいた青年だ。
「あっ」と、お互い声を上げちゃって、話をしないわけにはいかない雰囲気になってしまった。
向こうも想定していなかったのか、話題を探すようにちょっと頭をかきながら、その手を道路の向こう側にある丘の上に向けた。
「あれが俺の卒業した高校っす」
四角いコンクリートの建物とフェンスに囲まれた校庭。
たしかにまわりに何もないのが北海道らしいけど、そんなに土地が広いわけでもないし、学校だけを切り取ったら、日本のどこだか分からないと思う。
私の知らない彼女とどんな青春を過ごしていたのかも分からない。
それはもう卒業アルバムに閉じ込められた痛みの記憶なんだろうし。
何の感慨も浮かばない私は、言葉を見つけ出すことができなかった。
どこに行ったって同じものしかないからって、どこにも行かなくたって同じってわけじゃない。
どこか遠い知らない場所には、まだ自分も知らない自分がいる。
だから、私はもう次の旅に思いをはせている。
まだ旅の途中なのに。
だからごめんね。
目の前にいる君のことを心配してあげようなんて、そんな優しさ、おねえさんにはないのよ。
いちおう旅行ライターとして生計が成り立っていると説明すると、やはり言われるのだ。
『楽でいいね』
『趣味と実益が一致するなんてうらやましいよ』
でもそれは誰もが利用できる旅行サイトに書き込みをしていただけで、他にもたくさんの人が同じことをやっていて、私一人が特別だったわけじゃない。
ああ、逆か。
特別じゃない私が条件のいい仕事をしているのが気に障るのか。
でも、それは私のせいじゃない。
この人の彼女さんだって、行ける場所があったから選んだだけ。
話が途切れたところで、私は軽く会釈して車に乗り込んだ。
彼は敬礼するみたいに窓越しに手を上げると、背中を向けて去っていった。
私もエンジンをかけて駐車場を出る。
今日の宿は来た道を一時間半ほど戻った浦河というところだ。
でも、まだ全然明るいから、東の方に行けるだけドライブしてみようかな。
来た道と反対方向に海沿いを走る。
東西で向きは逆のはずなのに、打ち寄せる波の激しさは変わらない。
私は運転しながらいつの間にか亀のように首をすくめていた。
途中の展望台に車を止めたりしながらドライブを楽しんでいるうちに、ようやく日が傾いてきた。
私は来た道を戻って宿へ向かった。
襟裳岬を通過し、最初の街まで来たところで、コンビニがあったので寄ることにした。
北海道ならどこの街にでもあるケイコーマートだ。
ここのお弁当やお惣菜は地元食材をふんだんに使っていて普通のコンビニのレベルを超えているし、店内調理のテイクアウトなんか、そこらへんのレストランよりも実はよっぽどおいしいくらいだ。
前回はがっつりカツ丼をホテルの部屋で食べたんだけど、今回は何にしようかな。
と、車を出たら、店から見覚えのある人が出てくるところだった。
さっき襟裳岬にいた青年だ。
「あっ」と、お互い声を上げちゃって、話をしないわけにはいかない雰囲気になってしまった。
向こうも想定していなかったのか、話題を探すようにちょっと頭をかきながら、その手を道路の向こう側にある丘の上に向けた。
「あれが俺の卒業した高校っす」
四角いコンクリートの建物とフェンスに囲まれた校庭。
たしかにまわりに何もないのが北海道らしいけど、そんなに土地が広いわけでもないし、学校だけを切り取ったら、日本のどこだか分からないと思う。
私の知らない彼女とどんな青春を過ごしていたのかも分からない。
それはもう卒業アルバムに閉じ込められた痛みの記憶なんだろうし。
何の感慨も浮かばない私は、言葉を見つけ出すことができなかった。
どこに行ったって同じものしかないからって、どこにも行かなくたって同じってわけじゃない。
どこか遠い知らない場所には、まだ自分も知らない自分がいる。
だから、私はもう次の旅に思いをはせている。
まだ旅の途中なのに。
だからごめんね。
目の前にいる君のことを心配してあげようなんて、そんな優しさ、おねえさんにはないのよ。


