アラサー覆面調査員の出張メシ 夜のお供はコンビニ豚丼ですけど何か?

 あと、もう一つ、テーブルの裏側の落書きについての報告。

 実は、私、テーブルに座ったときに膝の上でスマホ検索をしている姿勢で、前面カメラを鏡にしてテーブルの裏側を見てたのね。

《殺、死、バカ》

 自分の座っていたところの左右両側にそういう落書きがあったのよ。

 おそらく地元の中学生あたりがふざけて書いているんだろうけど、こういうのを放置しておくと、お店の治安に影響が出るから、注意喚起が必要になる。

 店舗清掃で椅子を上げることはあってもテーブルを裏返す機会ってあまりないから、見逃しやすいところを狙われる。

 わざと見えにくいところに嫌がらせをしていくトラブルメーカーって年齢に関係なくいるものなのよね。

 逆に、常に消しておくことで、店員に気づかれていると分かった途端にそういう連中はよそへ移っていく。

 何が楽しいのか分からないけど、そういうことをして自分たちの存在を誇示したいのかもしれない。

 おまけに、誇示するくせに逃げていく。

 正直私には分からない。

 自分を誇示したいとも思わないし、認めてほしいとも思わない。

 それは旅のスタイルにも現れているとおり、私には共感を得たいという欲求がないんだと思う。

 ――ああ、だから彼氏がいないのか。

 だよね。

 だって、『百円ショップで、今この隙間掃除ブラシが大人気なんです』とかインフルエンサーが熱弁してても、『どうせ案件なんでしょ』とか、『使い古しの歯ブラシで良くない?』とか、『百円ショップなのに結局三百円かよ!』って、最初から拒絶のポーズで見ちゃうんだもん。

 そういう意味では、ツッコミどころ満載の昔のサスペンスドラマは私のためにあるのかもしれない、なんて思ってみたりしなくもなくはない。

 ま、いいや。

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 これで本当に今日の仕事は終わりだ。

 提出した私のレポートをどう評価するかは、調査会社やハンバーガーチェーン本部の仕事であって、私には関係ないことだ。

 それに、もう五年以上この仕事を続けているけど、契約に関する話は一度も来たこともなく、自動的に更新されている。

 おそらく、私のレポートは安くない経費に見合う程度には役に立っているんだろう。

 さてと、まだ十一時半。

 ここからは一般道を走る。

 断崖の迫る海沿いの道は細かくカーブしつつも、次から次へと現れる景色はほとんど変わらない。

 台風接近でもないのに、大海原からダイレクトに岩場に打ち寄せる波しぶきがシャワーのように降りかかり、日が差しているのにどこか薄暗い空が最果ての地へと私を誘っている。

 常に吹き寄せる潮風のせいで木も生えない丘陵を越えたところにその果てはあった。