おっと、なんか怪しい男が出てきましたよ。
イケメンの元婚約者なのに専務の娘と結婚が決まって被害者を振った役柄なんだけど、ひどい男のようでいてたぶん犯人じゃないのよね。
その横にいるモブっぽい同僚役の方が、実は被害者と幼い頃に生き別れた血のつながりのある兄とか、後から明かされたりして、真犯人だったりするのよ。
動機は遺産相続かな。
――って、ちょっとドラマに入り込んでいるうちに、なんか紅ショウガが癖になってきた。
うん、おいしいかも。
ドラマの緊張感に合わせて辛さがちょうどいい。
と、ここで露天風呂に死体が浮かんでCMです。
指にドレッシングがついちゃったし、ちょっと、お手洗いに行っておこう。
洗面台で水を流しながらふと鏡を見ると、艶のいい肌を上気させたアラサー女子がいた。
まあ、ジャストサーティーなんですけど、楽しいですよ、私。
鏡の中の自分に話しかけることの是非はおいといて、だって、笑顔なんだもん。
それが何よりの証拠でしょ。
CMあけでは、さっきの地味系同僚が警察と揉めて煙たがられている場面から再開。
で、それをルポライターが柱の陰からこっそり目撃しちゃうのね。
『彼女が自殺なんかするわけありませんよ。だって、お土産屋で日持ちするかって賞味期限を気にしてたんですから』
ああ、なるほど、そうやって警察の目をあのイケメンに向けさせようとするって作戦ね。
お約束の展開にうなずいたところで、思わず「あっ」と声が出た。
「もしかして、あのとき……」
え、何、そういうこと!?
襟裳岬で話しかけてきた彼。
私、男に振られてヤケになった女の一人旅と間違われたんだ。
ああ、もう、違うから。
飛び降りようとしたんじゃなくて、本当に風に押されただけなんだってば。
君と違って傷心なんかしてないし、私、めちゃくちゃ充実してますから。
まさか、そんな誤解されてたんだったら、私も、お土産が日持ちするかどうか、店員さんに聞いておくべきだったかな。
ハイハイ、もう、いいじゃん。
なんで私が謎解きなんかしなくちゃならないのよ。
名探偵じゃあるまいし。
私は残りの豚丼をカッカッカッと勢いよくかきこみ、ジャスミンティーで流し込んだ。
心優しき青年よ、あなたの推理は間違っています。
私にはね、お土産を買っていくような相手なんてそもそもいないんですから。
傷心なんてしないんです。
食後にゴミをかたづけると、ベッドの上で牛になる。
いいんじゃない、北海道だもの。
ドラマは終盤、犯人を滝の脇に追い詰めたところまで来た。
――嘘でしょ!?
湯煙探偵のルポライターが人差し指を突きつけたのはあのイケメン男性だった。
恋人を被害者に横取りされ自殺した妹の復讐として彼女に近づき、同じことをして苦しめてやったけど、たくらみを専務にばらすと脅されて結局殺害したのが真相。
で、地味同僚は会社のお金を使い込んでイケメンに罪をなすりつけようとしていたミスリード役。
うーん、そういうことですか。
そうですか。
全然かすりもしませんでしたね。
プツンとテレビを消してベッドに潜り込む。
きっと明日になればストーリーもトリックも真犯人ですら全部綺麗に忘れちゃってるんだろうな。
その何の重みもない究極の娯楽が二時間サスペンス。
恋もこんな感じならしてみなくもなくはないんだけどめんどくさいんだろうな。
おまけに、今みたいにすっかり勘違いするんだろうし。
なんて考え事をしているうちに私は眠りに落ちていた。
イケメンの元婚約者なのに専務の娘と結婚が決まって被害者を振った役柄なんだけど、ひどい男のようでいてたぶん犯人じゃないのよね。
その横にいるモブっぽい同僚役の方が、実は被害者と幼い頃に生き別れた血のつながりのある兄とか、後から明かされたりして、真犯人だったりするのよ。
動機は遺産相続かな。
――って、ちょっとドラマに入り込んでいるうちに、なんか紅ショウガが癖になってきた。
うん、おいしいかも。
ドラマの緊張感に合わせて辛さがちょうどいい。
と、ここで露天風呂に死体が浮かんでCMです。
指にドレッシングがついちゃったし、ちょっと、お手洗いに行っておこう。
洗面台で水を流しながらふと鏡を見ると、艶のいい肌を上気させたアラサー女子がいた。
まあ、ジャストサーティーなんですけど、楽しいですよ、私。
鏡の中の自分に話しかけることの是非はおいといて、だって、笑顔なんだもん。
それが何よりの証拠でしょ。
CMあけでは、さっきの地味系同僚が警察と揉めて煙たがられている場面から再開。
で、それをルポライターが柱の陰からこっそり目撃しちゃうのね。
『彼女が自殺なんかするわけありませんよ。だって、お土産屋で日持ちするかって賞味期限を気にしてたんですから』
ああ、なるほど、そうやって警察の目をあのイケメンに向けさせようとするって作戦ね。
お約束の展開にうなずいたところで、思わず「あっ」と声が出た。
「もしかして、あのとき……」
え、何、そういうこと!?
襟裳岬で話しかけてきた彼。
私、男に振られてヤケになった女の一人旅と間違われたんだ。
ああ、もう、違うから。
飛び降りようとしたんじゃなくて、本当に風に押されただけなんだってば。
君と違って傷心なんかしてないし、私、めちゃくちゃ充実してますから。
まさか、そんな誤解されてたんだったら、私も、お土産が日持ちするかどうか、店員さんに聞いておくべきだったかな。
ハイハイ、もう、いいじゃん。
なんで私が謎解きなんかしなくちゃならないのよ。
名探偵じゃあるまいし。
私は残りの豚丼をカッカッカッと勢いよくかきこみ、ジャスミンティーで流し込んだ。
心優しき青年よ、あなたの推理は間違っています。
私にはね、お土産を買っていくような相手なんてそもそもいないんですから。
傷心なんてしないんです。
食後にゴミをかたづけると、ベッドの上で牛になる。
いいんじゃない、北海道だもの。
ドラマは終盤、犯人を滝の脇に追い詰めたところまで来た。
――嘘でしょ!?
湯煙探偵のルポライターが人差し指を突きつけたのはあのイケメン男性だった。
恋人を被害者に横取りされ自殺した妹の復讐として彼女に近づき、同じことをして苦しめてやったけど、たくらみを専務にばらすと脅されて結局殺害したのが真相。
で、地味同僚は会社のお金を使い込んでイケメンに罪をなすりつけようとしていたミスリード役。
うーん、そういうことですか。
そうですか。
全然かすりもしませんでしたね。
プツンとテレビを消してベッドに潜り込む。
きっと明日になればストーリーもトリックも真犯人ですら全部綺麗に忘れちゃってるんだろうな。
その何の重みもない究極の娯楽が二時間サスペンス。
恋もこんな感じならしてみなくもなくはないんだけどめんどくさいんだろうな。
おまけに、今みたいにすっかり勘違いするんだろうし。
なんて考え事をしているうちに私は眠りに落ちていた。


