「ねえ、おねえさんも一緒にご飯、食べたら?」
「えっ……わ、私?」
「うん、フィーネおねえさん!」
居間へやってくると、クリスタがなぜか駆け寄ってきた。そのまま強引に席に座らされる。
「食事は賑やかな方が楽しいものね。よかったらどうかしら?」
微笑みかけてきたのはクラウディアである。会った頃の印象とは全く違い、今は優雅で上品で、その上優しい侯爵夫人にしか見えない。
(緊張するし避けたい、けど……見張らなきゃいけないから、食事は一緒に済ませちゃうのが楽なんだよね)
頷いて、フィーネは椅子に座った。
「助手は呼ばなくていいのか?」
「はい。その、遠出に少し疲れたみたいで……眠っているので、そのままにしてあげようかと」
「分かった。食事が必要になったら、あとで使用人に声をかけてくれ」
「お気遣い、ありがとうございます」
居間へ移動するタイミングで、ユーリアは客間へ行った。今頃、自宅とは比べ物にならないほど上質なベッドの上で休んでいるだろう。
使用人が運んできた三人分の食事は、クラウディアに合わせたのか柔らかい物が多かった。具材が溶けるほどよく煮込んだ野菜スープ、小さく切った鶏肉の入った卵粥、牛肉で作られたハンバーグ。
「いただきます」
手を合わせ、フォークに手を伸ばす。ハンバーグは一口噛むとすぐに肉汁が溢れ出した。
(美味しい……けど、ちょっと味が薄いな)
ユーリアの味付けに慣れているから、少しだけ物足りなく感じる。けれど高い肉を使っているから、肉本来の旨味が美味しい。
依頼者達の様子を窺うと、食事をする両親をクリスタが笑顔で見つめていた。
魔法人形の効果は約1日。明日の夕方にはもう、クリスタを土に戻さなくてはならない。
◆
夕食を終えると、クリスタがあくびをし始めた。いつもならそろそろ眠る時間だからだろう。
「……フィーネさん。お風呂には入っていいの?」
緊張した面持ちでクラウディアが尋ねてきた。
「はい。問題ありませんよ」
「なら、クリスタをお風呂に入れてあげるわ」
「分かりました。では、私は浴室の前で待機させていただきます」
ハインツと別れ、二人と共に浴室へ向かう。さすが侯爵家、と言いたくなるような立派な浴室だった。
「……風呂の世話は、使用人に任せることが多かったの。もっとやってあげればよかった」
呟いたクラウディアが、クリスタと共に浴室へ消えた。
ぽちゃ、ぽちゃと時折聞こえる水の音に耳を澄ませながら、ぼんやりと二人のことを考える。
上級貴族の夫人であれば、子供の世話は使用人に任せきり、ということは珍しくない。
家庭教師の手配等、教育については夫人の仕事とされるが、一般的な世話は貴族の仕事ではないのだ。
けれど、死んでしまった娘にしてやれなかったことは、後悔として心に残ってしまうのだろう。
「……1日でちゃんと、別れられるのかな」
そっと溜息を吐く。浴室から聞こえてきた楽しそうな笑い声が、フィーネにはとても寂しく聞こえた。
「えっ……わ、私?」
「うん、フィーネおねえさん!」
居間へやってくると、クリスタがなぜか駆け寄ってきた。そのまま強引に席に座らされる。
「食事は賑やかな方が楽しいものね。よかったらどうかしら?」
微笑みかけてきたのはクラウディアである。会った頃の印象とは全く違い、今は優雅で上品で、その上優しい侯爵夫人にしか見えない。
(緊張するし避けたい、けど……見張らなきゃいけないから、食事は一緒に済ませちゃうのが楽なんだよね)
頷いて、フィーネは椅子に座った。
「助手は呼ばなくていいのか?」
「はい。その、遠出に少し疲れたみたいで……眠っているので、そのままにしてあげようかと」
「分かった。食事が必要になったら、あとで使用人に声をかけてくれ」
「お気遣い、ありがとうございます」
居間へ移動するタイミングで、ユーリアは客間へ行った。今頃、自宅とは比べ物にならないほど上質なベッドの上で休んでいるだろう。
使用人が運んできた三人分の食事は、クラウディアに合わせたのか柔らかい物が多かった。具材が溶けるほどよく煮込んだ野菜スープ、小さく切った鶏肉の入った卵粥、牛肉で作られたハンバーグ。
「いただきます」
手を合わせ、フォークに手を伸ばす。ハンバーグは一口噛むとすぐに肉汁が溢れ出した。
(美味しい……けど、ちょっと味が薄いな)
ユーリアの味付けに慣れているから、少しだけ物足りなく感じる。けれど高い肉を使っているから、肉本来の旨味が美味しい。
依頼者達の様子を窺うと、食事をする両親をクリスタが笑顔で見つめていた。
魔法人形の効果は約1日。明日の夕方にはもう、クリスタを土に戻さなくてはならない。
◆
夕食を終えると、クリスタがあくびをし始めた。いつもならそろそろ眠る時間だからだろう。
「……フィーネさん。お風呂には入っていいの?」
緊張した面持ちでクラウディアが尋ねてきた。
「はい。問題ありませんよ」
「なら、クリスタをお風呂に入れてあげるわ」
「分かりました。では、私は浴室の前で待機させていただきます」
ハインツと別れ、二人と共に浴室へ向かう。さすが侯爵家、と言いたくなるような立派な浴室だった。
「……風呂の世話は、使用人に任せることが多かったの。もっとやってあげればよかった」
呟いたクラウディアが、クリスタと共に浴室へ消えた。
ぽちゃ、ぽちゃと時折聞こえる水の音に耳を澄ませながら、ぼんやりと二人のことを考える。
上級貴族の夫人であれば、子供の世話は使用人に任せきり、ということは珍しくない。
家庭教師の手配等、教育については夫人の仕事とされるが、一般的な世話は貴族の仕事ではないのだ。
けれど、死んでしまった娘にしてやれなかったことは、後悔として心に残ってしまうのだろう。
「……1日でちゃんと、別れられるのかな」
そっと溜息を吐く。浴室から聞こえてきた楽しそうな笑い声が、フィーネにはとても寂しく聞こえた。



