涼太が動画サイトでラジオ体操の音源を調べている間に陽菜と杏子は軽く体を動かして準備していた。ラジオ体操って準備運動なのに何を準備する必要があるんだよ、などというツッコミはしても無駄だから言わなかった。
「じゃあ、今から流すよ」
「はーい!」
音量はマックス。小さな公園に大音量のラジオ体操が流れ始める。聞き馴染みのあるピアノの音、ナレーション。そして何度も見たことのあるお兄さんが画面越しに元気よく体を動かしていた。陽菜はお兄さんに負けないくらい豪快に、派手に、大袈裟なくらいに体を動かしていて、正面にいた涼太が若干引いている。湊自身も、なぜそこまでラジオ体操ごときに真剣になれるのかわからず、幼馴染であるというのに彼女のことを理解できそうになかった。
そもそも陽菜のことを湊の常識で語ること自体、間違いなのかもしれない——と、これまでの陽菜の行いを思い出しながらダラダラと体を動かす。
「湊! そんなんじゃ、夏の暑さに勝てないよ!」
「別に、僕は夏の暑さと戦ってないし、勝ちたいとも思ったことないよ」
「さぁ、もっとちゃんと体全体を使って!」
「……聞いてないし」
キラキラとした期待した瞳で見つめられてしまっては拒否することもできない。湊は仕方なく、さっきより少しだけやる気を出す。すると、前に立っていた涼太が小さく吹き出した。
「なんで笑ってやがる。何も面白いことなんてなかっただろ、おい、聞いてんのかよ」
「……はは、あはは。だって湊たちのやりとり見てると、漫才見てるみたいで」
耐えられなくなったように涼太は腹を抱えて笑い転げる。そんな涼太を陽菜はきょとんとした様子で見つめ、杏子は一人でのんびりと体操を続けていた。
「好きでこんなことしてるんじゃない! 大体、陽菜が……!」
「なんで私のせいになるの! 湊だってやってくれるって言ったじゃん! 冤罪よ! 同罪だ!」
「せめて冤罪と同罪の意味を知ってから使って!?」
湊のツッコミが公園に響き渡った時、「あらあら」と第三者の声が聞こえてきた。ハッとして声のした方を見れば、公園の入り口に犬の散歩をしている三人のおばさんたちがいた。おばさんたちは「若いのに朝から偉いわねぇ」とか「ラジオ体操なんていつぶりかしら」とかほのぼのと話し合っている。
この奇妙な状況を見られたことに湊はパッと顔を赤く染めた。
「よかったら、一緒にやりませんかー!」
「……っばか! 変なこと言うな!」
羞恥心で口を噤んでいると、何を考えたのか陽菜がおばさんたちを誘った。湊は瞬時に陽菜の頭を小突き、おばさんたちに謝るように頭をペコペコ下げる。
「いいのよー。でも、うちの子たちのこともあるから今日は遠慮させてもらうわね」
「毎日ここでやってるの?」
「元気なことはいいことねぇ」
ニコニコと笑うおばさんたちに涼太が「いえ、今日たまたまやってるだけです」と陽菜の代わりに答えた。するとおばさんたちは「あら、それは残念ね」と言いながら手を振って犬の散歩に戻って行った。
「ねぇねぇ、ラジオ体操終わったけど、第二もやるの?」
自分のペースを崩さず杏子が陽菜に尋ねる。陽菜は一瞬悩んだ後、「できるところまでやってみよ!」と答えた。
その返事を聞いて、「ラジオ体操第二なんて知らないよ」と言って湊はまた肩を落とすのだった。
【『夏休みにやりたいことリスト百選』——みんなとラジオ体操をやる! 『完了』】
「じゃあ、今から流すよ」
「はーい!」
音量はマックス。小さな公園に大音量のラジオ体操が流れ始める。聞き馴染みのあるピアノの音、ナレーション。そして何度も見たことのあるお兄さんが画面越しに元気よく体を動かしていた。陽菜はお兄さんに負けないくらい豪快に、派手に、大袈裟なくらいに体を動かしていて、正面にいた涼太が若干引いている。湊自身も、なぜそこまでラジオ体操ごときに真剣になれるのかわからず、幼馴染であるというのに彼女のことを理解できそうになかった。
そもそも陽菜のことを湊の常識で語ること自体、間違いなのかもしれない——と、これまでの陽菜の行いを思い出しながらダラダラと体を動かす。
「湊! そんなんじゃ、夏の暑さに勝てないよ!」
「別に、僕は夏の暑さと戦ってないし、勝ちたいとも思ったことないよ」
「さぁ、もっとちゃんと体全体を使って!」
「……聞いてないし」
キラキラとした期待した瞳で見つめられてしまっては拒否することもできない。湊は仕方なく、さっきより少しだけやる気を出す。すると、前に立っていた涼太が小さく吹き出した。
「なんで笑ってやがる。何も面白いことなんてなかっただろ、おい、聞いてんのかよ」
「……はは、あはは。だって湊たちのやりとり見てると、漫才見てるみたいで」
耐えられなくなったように涼太は腹を抱えて笑い転げる。そんな涼太を陽菜はきょとんとした様子で見つめ、杏子は一人でのんびりと体操を続けていた。
「好きでこんなことしてるんじゃない! 大体、陽菜が……!」
「なんで私のせいになるの! 湊だってやってくれるって言ったじゃん! 冤罪よ! 同罪だ!」
「せめて冤罪と同罪の意味を知ってから使って!?」
湊のツッコミが公園に響き渡った時、「あらあら」と第三者の声が聞こえてきた。ハッとして声のした方を見れば、公園の入り口に犬の散歩をしている三人のおばさんたちがいた。おばさんたちは「若いのに朝から偉いわねぇ」とか「ラジオ体操なんていつぶりかしら」とかほのぼのと話し合っている。
この奇妙な状況を見られたことに湊はパッと顔を赤く染めた。
「よかったら、一緒にやりませんかー!」
「……っばか! 変なこと言うな!」
羞恥心で口を噤んでいると、何を考えたのか陽菜がおばさんたちを誘った。湊は瞬時に陽菜の頭を小突き、おばさんたちに謝るように頭をペコペコ下げる。
「いいのよー。でも、うちの子たちのこともあるから今日は遠慮させてもらうわね」
「毎日ここでやってるの?」
「元気なことはいいことねぇ」
ニコニコと笑うおばさんたちに涼太が「いえ、今日たまたまやってるだけです」と陽菜の代わりに答えた。するとおばさんたちは「あら、それは残念ね」と言いながら手を振って犬の散歩に戻って行った。
「ねぇねぇ、ラジオ体操終わったけど、第二もやるの?」
自分のペースを崩さず杏子が陽菜に尋ねる。陽菜は一瞬悩んだ後、「できるところまでやってみよ!」と答えた。
その返事を聞いて、「ラジオ体操第二なんて知らないよ」と言って湊はまた肩を落とすのだった。
【『夏休みにやりたいことリスト百選』——みんなとラジオ体操をやる! 『完了』】



