追い越せ!青春!

 場所を移して、近くの公園に四人でやってきた。炎天下の中、どうして公園なんかに連れて来られなければいけないのか。

 いい加減説明しろ、という意味を込めてジトっとした視線を送れば、陽菜は肩掛けの鞄から全ての元凶のノートを取り出す。


「『夏休みにやりたいことリスト百選』その一!」


 そこで、コホンと咳払いを一つ。おっとりマイペースな杏子がニコニコと笑いながら拍手を送って盛り上げている。涼太は湊の方をチラッと見ると諦めたように肩を竦めていた。自分と同じ気持ちなら一緒に陽菜を止めてくれたっていいんだぞ。

「ふふん、それは——みんなでラジオ体操に参加すること!」
「は?」

 思わず声が低くなったことはどうか許してほしい。ただでさえ朝早くに起こされて気分は急降下気味なのだ。クーラーの効いた快適な部屋からわざわざ炎天下に出てきたのに、陽菜の口から出てきたのは近所のおじさんやおばさんがやるようなラジオ体操。もっと壮大なことが待っているとなんとか自分に言い聞かせてここまできた自分の気持ちを返してほしい。切実に。

「いいねぇ、健康的で」

 どこか間延びした声で杏子が陽菜の提案に同調する。いつもニコニコと笑っているからか、いまいち本心かどうかわからない。

「ラジオ体操って、子供の参加率が落ちたから無くなったって聞いてたけど、この地区ではまだやってるんだ?」

 涼太が湊と陽菜を交互に見つめる。湊は記憶をひっくり返したが、生まれてこのかた、この地区で早朝にラジオ体操が行われているところを見たことがなかった。

「ううん、やってないよ」

 あっけらかんとした物言いに涼太が戸惑った様子で湊の方を見てきた。こっちを見るな、陽菜の考えていることなんてわかるわけないだろ。

「じゃあ、どこでラジオ体操するの?」

 目を丸くしながら杏子が当然の質問をする。すると陽菜はカーキ色したカーゴパンツのポケットからスマートフォンを取り出す。その様子を見て湊はまさか、と思いげんなりとした。

 陽菜はそれは楽しそうに笑った。


「やってないなら、自分たちでやればいいんだよ!」


 妙案でしょ、と言わんばかりの自信たっぷりな様子になぜか杏子は「なるほど!」と感嘆の声を上げる。さす学年一天然と言われるだけある。いや、それにしたって簡単に納得しないで。

「本当にやるのかよ」

 湊がムスッとした顔で確認すれば陽菜は「もちろん!」と太陽に向かって咲く向日葵のように綺麗に笑った。その笑顔を見て湊は何も言えなくなってしまい隣の涼太に助けを乞う。しかし涼太は胡散臭い笑みを浮かべて「俺が検索しようか?」などと賛成の意を示したため、この場で反対しているのは港だけになってしまった。


「さぁ、元気に体を動かそう!」


 陽菜の元気な掛け声で湊は完全に諦めた。