ぽん。朝電車に乗ったところでスマホが鳴った。
『涼介、おはよう』
『今日もバスケがある』
『オレすごく楽しみ』
『涼介も見に来る?』
朝から元気だな、ドーベルマン。まだ七時半だぞ。ぽちぽち返事を打つ。
『朝からうるさい』
『うざい?』
『そこまで言ってない』
『うるさいとうざいだったら、うざいのほうがひどい?』
『正解』
ノアがフリック入力を覚えたいと言ってから二週間。
最初は「たつた」なんて送ってきていたくせに、今はレスポンスも早くなってきている。なのに、メッセージの多さは相変わらずだ。
『涼介もバスケ見に来る?』
『図書室に行く』
返信するとすぐに既読がつく。
『涼介は図書室ばっかり。うざい』
『使い方合ってる?』
『ひどすぎる?』
メッセージの連射モード、解除する気はないらしい。
『ちょっとニュアンスが違うかも』
『うざいって難しい』
はいはい、続きは教室で。スマホをポケットにしまう。どうせ学校に着けば、「涼介涼介ー」と直接本人がやって来る。
「おはよ」
教室に入ると、クラスメイトと立ち話していたノアが、「涼介おはよう!」とぶんぶんしっぽを振り回しながら俺のところへやって来た。ほらな。俺はドーベルマンのことには詳しいんだ。
「ノア、朝からうざい」
「あっ、それひどいやつだ!」
「こうやって覚えな」
「みんなー、涼介がひどい」
あははと教室に笑い声が溢れる。なんとなくだけど、ノアが来てから教室の雰囲気が明るくなった。大学受験を終えた三年生なんて、残りの学校生活の消化試合になるかと思ってた。なのに、実際は毎日忙しい。
「ノアと委員長、これ食う?」
ひとりのクラスメイトが大きな菓子袋を見せてきた。ラッキー、俺の好きな塩せんべい。
「サンキュー。どうしたの、それ」
「家族が土産物でもらってきたんだけど、多いから学校でばらまこうと思って」
ありがとと一袋もらう。ところがノアは手を突きだした。
「オレはいらない」
「あ、そう?」
クラスメイトはすぐに離れていき、「おせんべいほしいやついるー?」と配り始めた。ちょこっとため息をつく。ストレートすぎじゃない?
「ノア」
小さな声で言う。
「もうちょっと言い方を考えて」
「言い方?」
「『ありがとう、でもいい』とか。『いらない』だけだと冷たくない?」
「でも、オレはいらないと思ったから」
「そうだけどさ。せっかくくれようとしたんだから、ありがとうくらい言ったら」
「涼介ってそういう性格だよな」
「なにが?」
「相手を気にしすぎる」
「……普通じゃない?」
「オレは気にしない」
「知ってるよ!」
「オレに詳しくなった」
「誰のせいだよ!」
思わず突っ込んだら、ノアはにんまりとしてくくっと笑った。
やっぱりこいつ生意気! 朝からうるさいって言ったのも絶対気にしてない! 十六歳め、ちょっとは十八を敬え!
『涼介、おはよう』
『今日もバスケがある』
『オレすごく楽しみ』
『涼介も見に来る?』
朝から元気だな、ドーベルマン。まだ七時半だぞ。ぽちぽち返事を打つ。
『朝からうるさい』
『うざい?』
『そこまで言ってない』
『うるさいとうざいだったら、うざいのほうがひどい?』
『正解』
ノアがフリック入力を覚えたいと言ってから二週間。
最初は「たつた」なんて送ってきていたくせに、今はレスポンスも早くなってきている。なのに、メッセージの多さは相変わらずだ。
『涼介もバスケ見に来る?』
『図書室に行く』
返信するとすぐに既読がつく。
『涼介は図書室ばっかり。うざい』
『使い方合ってる?』
『ひどすぎる?』
メッセージの連射モード、解除する気はないらしい。
『ちょっとニュアンスが違うかも』
『うざいって難しい』
はいはい、続きは教室で。スマホをポケットにしまう。どうせ学校に着けば、「涼介涼介ー」と直接本人がやって来る。
「おはよ」
教室に入ると、クラスメイトと立ち話していたノアが、「涼介おはよう!」とぶんぶんしっぽを振り回しながら俺のところへやって来た。ほらな。俺はドーベルマンのことには詳しいんだ。
「ノア、朝からうざい」
「あっ、それひどいやつだ!」
「こうやって覚えな」
「みんなー、涼介がひどい」
あははと教室に笑い声が溢れる。なんとなくだけど、ノアが来てから教室の雰囲気が明るくなった。大学受験を終えた三年生なんて、残りの学校生活の消化試合になるかと思ってた。なのに、実際は毎日忙しい。
「ノアと委員長、これ食う?」
ひとりのクラスメイトが大きな菓子袋を見せてきた。ラッキー、俺の好きな塩せんべい。
「サンキュー。どうしたの、それ」
「家族が土産物でもらってきたんだけど、多いから学校でばらまこうと思って」
ありがとと一袋もらう。ところがノアは手を突きだした。
「オレはいらない」
「あ、そう?」
クラスメイトはすぐに離れていき、「おせんべいほしいやついるー?」と配り始めた。ちょこっとため息をつく。ストレートすぎじゃない?
「ノア」
小さな声で言う。
「もうちょっと言い方を考えて」
「言い方?」
「『ありがとう、でもいい』とか。『いらない』だけだと冷たくない?」
「でも、オレはいらないと思ったから」
「そうだけどさ。せっかくくれようとしたんだから、ありがとうくらい言ったら」
「涼介ってそういう性格だよな」
「なにが?」
「相手を気にしすぎる」
「……普通じゃない?」
「オレは気にしない」
「知ってるよ!」
「オレに詳しくなった」
「誰のせいだよ!」
思わず突っ込んだら、ノアはにんまりとしてくくっと笑った。
やっぱりこいつ生意気! 朝からうるさいって言ったのも絶対気にしてない! 十六歳め、ちょっとは十八を敬え!


