「あ、涼介が戻ってきた」
昼休み、生徒会から戻ってくると、窓に背もたれていたノアがぱっと顔をこちらに向けた。他のクラスメイトも見てくる。俺は親指をつき立ててグーを出した。
「ばっちり! うちのクラスの案が通った!」
「やったー!!」
賑やかなお昼休みが拍手で沸き返る。
文化祭の学校紹介企画はスタンプラリー&動画案が採用された。昼休み早々生徒会から連絡を受けて、確認をしに行ってきたのだ。俺の結果報告にクラスが明るくなる。
「文化祭楽しみ! 最後だもんね」
「中三じゃないけど、スタンプラリー回っちゃおうかな」
「私もやりたいかも」
お弁当を囲むみんながわいわいと盛り上がり、俺もようやく自席について弁当を取り出した。
お腹が空いた。昼休み始めに呼び出しなんて、生徒会って結構鬼だ。
机に弁当を広げようとするとノアが隣の席へ戻ってくる。
「涼介、ご飯食べよ!」
「あれ、今窓際で食べてたんじゃないの?」
「涼介と食べたかったから待ってた」
「……お腹空かなかったの?」
「オレは空いたけど待ってた」
ドーベルマン、餌を前にして待てを覚えた。教室の時計を見る。昼休みが始まってもう十分はたっている。
「ごめん! お腹空いたよな」
「オレが勝手に待ってただけ」
二人で机をくっつけ、急いで弁当を開ける。
「涼介の家の卵焼き、好き。おかず交換しよ」
「そっちのからあげくれるならいいよ」
「Wow! 今日は最高の一日だ!」
「ノアの最高、ハードルが低くない?」
「そんなことを言うなんて信じられない。この卵焼きの味は神様に感謝すべきだろ」
ノアって背もでかいけど、規模もでかい。
「委員長、お疲れー」
隣で机を囲っている陽キャ集団が労ってきた。つい笑顔になる。
「自分のクラスの案が通ると結構嬉しいもんだね」
「話し合った甲斐があった」
「あれ、ノアがまとめてたよな」
「ノアもお疲れー」
ノアが「うん、よかった」と笑顔で答える。食べてる最中で「うん、よはっは」としか聞こえなかったけど。
「ノア、ごっくんしてからしゃべって」
「ごめん」
こちらのやり取りに陽キャ集団が笑う。
「飼い主が躾けてる」
「ノア、委員長に逆らうなよ」
「そうそう、飼い主の言うことは絶対だぞ」
ノアは飼い主の言葉を否定もせず、「はいはい」とご飯を頬張っている。
「てかさ、購買のメロンパン、メーカーが変わったよな」
ひとりが話題を変えた。その手にはメロンパン。男子は、基本的に常に腹が減っている。購買のパンやおにぎりはだいたい食いしん坊の男子に駆逐される。
「それな。カリカリ具合が変わった」
「俺、前のほうが好きだった。中に入ってるのもホイップクリームだったし」
「今のはメロンって感じが強すぎ」
「委員長どっち派?」
話題がこっちに飛んできた。
「俺は――」
……前だったら前へ倣えで答えてたけど。
「俺は、今のほうかも。メロンが強いほうがおいしくない?」
「少数派じゃん」
「委員長がそっちに行くの珍し」
「そう?」
そこにノアが「オレも今のほうが好き」と割って入ってきた。
「涼介と半分こしたときおいしかった」
「そこは聞いてねえよ」
みんなが呆れかえる。おいドーベルマン、余計なことを言うな。なんか恥ずかしいだろ。
ちらっとこちらを見たひとりが言う。
「委員長、最近ノアナイズドされてない?」
「なに、ノアナイズドって」
「はっきり言うようになった」
……否定できない。ちょっと癪だ。
「……そう?」
「ノアと一緒にいるからだぞ」
ひとりの言葉にノアがにんまりとする。
「オレのおかげか」
「なんでノアが得意げなの」
「涼介が変わった」
「上から目線、やめろ!」
俺の突っ込みにあははと周りからも笑い声があがる。最近、俺もよく笑ってる気がする。ドーベルマンがわんわんうるさいせいだ。
昼休み、生徒会から戻ってくると、窓に背もたれていたノアがぱっと顔をこちらに向けた。他のクラスメイトも見てくる。俺は親指をつき立ててグーを出した。
「ばっちり! うちのクラスの案が通った!」
「やったー!!」
賑やかなお昼休みが拍手で沸き返る。
文化祭の学校紹介企画はスタンプラリー&動画案が採用された。昼休み早々生徒会から連絡を受けて、確認をしに行ってきたのだ。俺の結果報告にクラスが明るくなる。
「文化祭楽しみ! 最後だもんね」
「中三じゃないけど、スタンプラリー回っちゃおうかな」
「私もやりたいかも」
お弁当を囲むみんながわいわいと盛り上がり、俺もようやく自席について弁当を取り出した。
お腹が空いた。昼休み始めに呼び出しなんて、生徒会って結構鬼だ。
机に弁当を広げようとするとノアが隣の席へ戻ってくる。
「涼介、ご飯食べよ!」
「あれ、今窓際で食べてたんじゃないの?」
「涼介と食べたかったから待ってた」
「……お腹空かなかったの?」
「オレは空いたけど待ってた」
ドーベルマン、餌を前にして待てを覚えた。教室の時計を見る。昼休みが始まってもう十分はたっている。
「ごめん! お腹空いたよな」
「オレが勝手に待ってただけ」
二人で机をくっつけ、急いで弁当を開ける。
「涼介の家の卵焼き、好き。おかず交換しよ」
「そっちのからあげくれるならいいよ」
「Wow! 今日は最高の一日だ!」
「ノアの最高、ハードルが低くない?」
「そんなことを言うなんて信じられない。この卵焼きの味は神様に感謝すべきだろ」
ノアって背もでかいけど、規模もでかい。
「委員長、お疲れー」
隣で机を囲っている陽キャ集団が労ってきた。つい笑顔になる。
「自分のクラスの案が通ると結構嬉しいもんだね」
「話し合った甲斐があった」
「あれ、ノアがまとめてたよな」
「ノアもお疲れー」
ノアが「うん、よかった」と笑顔で答える。食べてる最中で「うん、よはっは」としか聞こえなかったけど。
「ノア、ごっくんしてからしゃべって」
「ごめん」
こちらのやり取りに陽キャ集団が笑う。
「飼い主が躾けてる」
「ノア、委員長に逆らうなよ」
「そうそう、飼い主の言うことは絶対だぞ」
ノアは飼い主の言葉を否定もせず、「はいはい」とご飯を頬張っている。
「てかさ、購買のメロンパン、メーカーが変わったよな」
ひとりが話題を変えた。その手にはメロンパン。男子は、基本的に常に腹が減っている。購買のパンやおにぎりはだいたい食いしん坊の男子に駆逐される。
「それな。カリカリ具合が変わった」
「俺、前のほうが好きだった。中に入ってるのもホイップクリームだったし」
「今のはメロンって感じが強すぎ」
「委員長どっち派?」
話題がこっちに飛んできた。
「俺は――」
……前だったら前へ倣えで答えてたけど。
「俺は、今のほうかも。メロンが強いほうがおいしくない?」
「少数派じゃん」
「委員長がそっちに行くの珍し」
「そう?」
そこにノアが「オレも今のほうが好き」と割って入ってきた。
「涼介と半分こしたときおいしかった」
「そこは聞いてねえよ」
みんなが呆れかえる。おいドーベルマン、余計なことを言うな。なんか恥ずかしいだろ。
ちらっとこちらを見たひとりが言う。
「委員長、最近ノアナイズドされてない?」
「なに、ノアナイズドって」
「はっきり言うようになった」
……否定できない。ちょっと癪だ。
「……そう?」
「ノアと一緒にいるからだぞ」
ひとりの言葉にノアがにんまりとする。
「オレのおかげか」
「なんでノアが得意げなの」
「涼介が変わった」
「上から目線、やめろ!」
俺の突っ込みにあははと周りからも笑い声があがる。最近、俺もよく笑ってる気がする。ドーベルマンがわんわんうるさいせいだ。


