ライちゃんじゃなくて、この声で君とお話ができたら

途端に沸々と腹の中で怒りが沸き上がってきた。この予感は知っている。ドンドンと心の扉を叩かれる音、それは徐々に強くなり、ついには蹴破るように出てきては自分を追い出していく。
 
 ライ太を右手に嵌めた志優は、男の前に勢いよく突き出した。

「おい、何するんだよっ」

 志優の……いや、ライ太の大きな声が響き渡る。男はそんな自分の様子を見て瞠目していた。
 
 「よくも俺の友達をっ‼」

 扉の向こうに居るライ太(かれ)へ何度も訴える。そんな頭ごなしに怒ってドン引かれてしまったらどうするんだろう。
 それでこそ不気味がられて暴言を吐かれてしまったら……。
 
「あのさ……」

 志優が何度も訴えたことで、ライ太がスッと後ろへと引き下がっていく感覚がすると意識が戻ってくる。
 戻ってきた志優がゆっくり瞼を開けたところで彼の動く気配を感じた。すると彼は膝を立てて此方へ向かってこようとしている。
 これは怒らせてしまったかもしれない。
 
 志優は怖さのあまり咄嗟に立ち上がると逃げるようにその場から立ち去った。
 
 全力疾走で正面玄関を通り過ぎ、校舎への門戸を抜けて郊外へと出ると追って来ないのを確認して一息つく。
 不安がどっと押し寄せてきた。

 ただでさえクラスメイトから浮いた存在になってしまった自分が、不良に目をつけられて虐められるなんて今度こそ終わりだ。

 ライ太の存在は心強くていつも頼りにしてるけど、志優とは違い感情的になる部分が多い。
 志優はライ太をぎゅっと抱え歩く。

 電車の駅に到着し、改札を抜け電車を待っている間も先程の出来事を思い出しては身を震わせていた。