翌朝起きたら、いつも通りベッドの上で相楽に抱きつかれていた。
昨日、相楽が帰ってきた後の記憶がない。おそらくすぐに寝てしまった俺をベッドまで運んでくれた。
今日は2人とも夕方からバイトだから、午前中にスーパーへ行って、夜ご飯を作り置きしておく予定。
とりあえず、起きるか…
起き上がろうとした瞬間、寝ているはずの相楽に腰あたりをぐいっと持たれて、向き合う形でまた寝転んだ。
「…おはよう」
「おはよ」
相楽はじっと俺を見る。
「……なに?」
「俺、昨日…いや、24時過ぎてたから今日か。プロポーズされたよね?」
「…プロポーズ?」
「うん」
「…え…誰に?」
「佐野に」
「……えぇ!?俺!?」
「だって、ずっとここにいて、って言ってくれたじゃん。それって実質プロポーズだよね」
「俺…そんな事言ったっけ…?」
「覚えてないとか受け付けないから」
相楽の口調が本気で、昨夜のことを必死で思い出してみる。
相楽に起こされて…そんで俺が……え、抱き寄せた!?待って待って……考える前に勝手に帰らないでって言葉が出て……その後……うわ、言ってるわ俺…。
自分の言動を思い出して身体中が熱くなり、恥ずかしさで死にそうだ。
顔を赤くする俺を見て、相楽は少し意地悪な顔をする。
「言ったよね?」
小さく頷くと、ニコッと笑顔を見せた相楽は身体を起こし、ベッドの上に正座をする。俺もつられて目の前に正座した。
「ほんとはもっとちゃんとした格好やシチュエーションが良いとは思うんだけど、早く返事したいから…」
え…返事?
「俺も佐野と結婚したい。ずっと一緒にいたい」
「……ちょっ、待って待って!いや、あの、俺が言ったのは、その…今の生活が続いてほしいなって意味というか…結婚とかそういう…いや、そもそも結婚は付き合ってる男女がすることで…俺らは友達…」
「友達じゃないよ」
「えっ…」
「俺は佐野が好きだよ。家での素の佐野を知ってもっと好きになった」
あ、そうだったんだ。…それは、かなり嬉しい。
「だから俺の判断はもう出た。佐野は俺と付き合えるかの判断は出た?今の生活が続いてほしいって、友達としてルームシェアしたいって意味?好きだから一緒に暮らしたいって思ってる俺とは気持ちが違うってこと?」
「あっ、え…」
質問を畳み掛けられ焦る俺の手を相楽が優しく握った。
「ごめん、一気に聞き過ぎた。……佐野の本音が聞きたい。ここには俺しかいないから周りの目気にしたり、嘘ついたりする必要ないよ」
寝起きからキラキラ輝く相手を前に、クソダサい俺はごちゃ混ぜになった本音を上手く伝えられるだろうか…。
「俺は…まだまだダメなとこや弱いとこが沢山あって…相楽の足元にも及ばなくて…。変われるように自分なりに頑張ってるけど、毎日いっぱいいっぱいで…。だから正直最初は誰かと暮らすなんて絶対に嫌だった。…だけど今は、相楽がいなきゃ無意味というか…」
あぁ、やっぱ上手くまとまらない。
「……だけど不安なこともあって…」
「なに?」
「今の生活は恋人になったら…変わる?」
「変わると思うよ」
「え…そっか…」
「良い意味でね」
「え」
「今はお試しだから我慢してるけど、付き合ったらもっとイチャつくし、もっと佐野を俺で埋め尽くすもん」
「……もっと…?」
「うん。やばいな、恋人として暮らして、もっと楽しくなるの想像しただけでニヤケそう」
「…あはっ、相楽のそんな顔初めて見た」
「俺だってまだ見せてない表情や弱い部分沢山あるよ。むしろ、俺の方が失望されないか不安なんだけど」
「それは絶対ないって」
「ほんと?」
「うん」
「なんで言い切れるの?」
「…それは…」
生まれ変わって、一軍男子として生きると決めたのは自分自身だ。そのために友達にも自分にも嘘をつく瞬間もある。外で頑張る分、この家では本来の自分を甘やかすのがルール。そのままの俺を……
「…好きだから。…相楽のことが、好きだから嫌いにならない…絶対に」
緊張と恥ずかしさで下を向く俺を相楽はぎゅっと抱き締めた。
「ありがと。俺もおんなじ気持ち。…だから、今日からお付き合い開始ってことでよろしく」
「…うん。よろしく…お願いします」
「じゃ、もう遠慮しないでいいね」
腕を解いた相楽は顔を近づけてくる。
「…っ!?え、ちょっ、なに」
「なにって、キスする」
「い、いきなり!?」
「もしかして、許可制?」
「え、いや、そういうわけじゃねーけど、その…心の準備が…」
「準備とかいらない。嫌ならしないけど」
「嫌…じゃないけど…」
初めてのことにドギマギする俺の頬に手を添えた相楽。
「…佐野、大好きだよ」
…ちゅ…
…うわ、なにこれ。めちゃくちゃドキドキするのに…心がめっちゃ軽い。
◇
相楽と付き合い始めて1週間。お互いの判断が出て、無事に恋人になっても、夏休みの間は2人での生活を継続することにした。
2人の生活は、変わらず楽しくて落ち着くんだけど…
「この俳優さん、最近めっちゃドラマ出てるよね」
「あ、うん、たしかに…」
流行りに乗るためドラマを観る俺は、相楽に後ろから包まれる状態だ。
「あ、キスした。展開早くない?」
「だな…」
「俺らもしとこ」
「え…」
俺の頬を掴み、キスをしてきた相楽。
良い意味で変わると言った生活は、宣言通り隙あらばイチャつこうとする相楽に圧倒される毎日だ。
観終わった頃、しおみーから電話がかかってきた。一気に身体に力が入る。
「誰から?」
「しおみー」
通話ボタンを押す前にゆっくりと深呼吸をする。
「ふぅー…」
そんな俺の手をそっと握った相楽。
「…もしもし」
「あ、佐野っちお疲れ!今大丈夫だった?」
「全然よゆー!どした?」
「来週の水木あたり暇だったりする?」
「あーごめん。来週実家帰んなきゃで」
「まじか。おっけ、また別日で誘うわ」
「りょーかい。じゃ、またなー」
通話がちゃんと切れたことを確認して、スマホを握ったまま相楽の肩に寄りかかった。
「はぁ〜…、緊張したぁ」
「佐野、俳優になれるんじゃない?」
「…馬鹿にしてるだろ」
「してないって。…よく頑張りました」
頭をポンポンされ、照れ臭くなる。
✳︎
「4日間も会えないとか、耐えられない」
ベッドの中で相楽は拗ねているのか、寂しいのか、よく分からない顔をしている。
「俺のいない間ここに居てもいいし、家に帰ってもいいし」
「…俺もついて行こうかな」
「それは絶対無理」
「そんなキッパリ言わなくても」
「今回は無理だけど…冬休みに帰る時は…一緒に来てほしい…です」
「……。」
相楽は何も言わず口元を片手で隠した。
あれ、ダメだった…?
「…あくまで俺の希望だから…」
「ごめん、ニヤけるのを我慢してた。…嬉しい、絶対行く」
「…ありがと」
「帰省中、毎晩電話するから絶対出て」
「うん。…でも、別に離れてる時ぐらい俺のことほっといてくれて大丈夫だから」
「ほっとくわけないじゃん。つうか、一生放っておかないから覚悟してて」
「…っ」
恥ずかしくなって顔を見られないように抱きついた。
どうしよう…幸せだ!
一軍に合わせて陽キャになる自分も、人見知りで自信のない自分も、まだ好きにはなれないけれど、相楽といる時の自分は結構好きだ。
昨日、相楽が帰ってきた後の記憶がない。おそらくすぐに寝てしまった俺をベッドまで運んでくれた。
今日は2人とも夕方からバイトだから、午前中にスーパーへ行って、夜ご飯を作り置きしておく予定。
とりあえず、起きるか…
起き上がろうとした瞬間、寝ているはずの相楽に腰あたりをぐいっと持たれて、向き合う形でまた寝転んだ。
「…おはよう」
「おはよ」
相楽はじっと俺を見る。
「……なに?」
「俺、昨日…いや、24時過ぎてたから今日か。プロポーズされたよね?」
「…プロポーズ?」
「うん」
「…え…誰に?」
「佐野に」
「……えぇ!?俺!?」
「だって、ずっとここにいて、って言ってくれたじゃん。それって実質プロポーズだよね」
「俺…そんな事言ったっけ…?」
「覚えてないとか受け付けないから」
相楽の口調が本気で、昨夜のことを必死で思い出してみる。
相楽に起こされて…そんで俺が……え、抱き寄せた!?待って待って……考える前に勝手に帰らないでって言葉が出て……その後……うわ、言ってるわ俺…。
自分の言動を思い出して身体中が熱くなり、恥ずかしさで死にそうだ。
顔を赤くする俺を見て、相楽は少し意地悪な顔をする。
「言ったよね?」
小さく頷くと、ニコッと笑顔を見せた相楽は身体を起こし、ベッドの上に正座をする。俺もつられて目の前に正座した。
「ほんとはもっとちゃんとした格好やシチュエーションが良いとは思うんだけど、早く返事したいから…」
え…返事?
「俺も佐野と結婚したい。ずっと一緒にいたい」
「……ちょっ、待って待って!いや、あの、俺が言ったのは、その…今の生活が続いてほしいなって意味というか…結婚とかそういう…いや、そもそも結婚は付き合ってる男女がすることで…俺らは友達…」
「友達じゃないよ」
「えっ…」
「俺は佐野が好きだよ。家での素の佐野を知ってもっと好きになった」
あ、そうだったんだ。…それは、かなり嬉しい。
「だから俺の判断はもう出た。佐野は俺と付き合えるかの判断は出た?今の生活が続いてほしいって、友達としてルームシェアしたいって意味?好きだから一緒に暮らしたいって思ってる俺とは気持ちが違うってこと?」
「あっ、え…」
質問を畳み掛けられ焦る俺の手を相楽が優しく握った。
「ごめん、一気に聞き過ぎた。……佐野の本音が聞きたい。ここには俺しかいないから周りの目気にしたり、嘘ついたりする必要ないよ」
寝起きからキラキラ輝く相手を前に、クソダサい俺はごちゃ混ぜになった本音を上手く伝えられるだろうか…。
「俺は…まだまだダメなとこや弱いとこが沢山あって…相楽の足元にも及ばなくて…。変われるように自分なりに頑張ってるけど、毎日いっぱいいっぱいで…。だから正直最初は誰かと暮らすなんて絶対に嫌だった。…だけど今は、相楽がいなきゃ無意味というか…」
あぁ、やっぱ上手くまとまらない。
「……だけど不安なこともあって…」
「なに?」
「今の生活は恋人になったら…変わる?」
「変わると思うよ」
「え…そっか…」
「良い意味でね」
「え」
「今はお試しだから我慢してるけど、付き合ったらもっとイチャつくし、もっと佐野を俺で埋め尽くすもん」
「……もっと…?」
「うん。やばいな、恋人として暮らして、もっと楽しくなるの想像しただけでニヤケそう」
「…あはっ、相楽のそんな顔初めて見た」
「俺だってまだ見せてない表情や弱い部分沢山あるよ。むしろ、俺の方が失望されないか不安なんだけど」
「それは絶対ないって」
「ほんと?」
「うん」
「なんで言い切れるの?」
「…それは…」
生まれ変わって、一軍男子として生きると決めたのは自分自身だ。そのために友達にも自分にも嘘をつく瞬間もある。外で頑張る分、この家では本来の自分を甘やかすのがルール。そのままの俺を……
「…好きだから。…相楽のことが、好きだから嫌いにならない…絶対に」
緊張と恥ずかしさで下を向く俺を相楽はぎゅっと抱き締めた。
「ありがと。俺もおんなじ気持ち。…だから、今日からお付き合い開始ってことでよろしく」
「…うん。よろしく…お願いします」
「じゃ、もう遠慮しないでいいね」
腕を解いた相楽は顔を近づけてくる。
「…っ!?え、ちょっ、なに」
「なにって、キスする」
「い、いきなり!?」
「もしかして、許可制?」
「え、いや、そういうわけじゃねーけど、その…心の準備が…」
「準備とかいらない。嫌ならしないけど」
「嫌…じゃないけど…」
初めてのことにドギマギする俺の頬に手を添えた相楽。
「…佐野、大好きだよ」
…ちゅ…
…うわ、なにこれ。めちゃくちゃドキドキするのに…心がめっちゃ軽い。
◇
相楽と付き合い始めて1週間。お互いの判断が出て、無事に恋人になっても、夏休みの間は2人での生活を継続することにした。
2人の生活は、変わらず楽しくて落ち着くんだけど…
「この俳優さん、最近めっちゃドラマ出てるよね」
「あ、うん、たしかに…」
流行りに乗るためドラマを観る俺は、相楽に後ろから包まれる状態だ。
「あ、キスした。展開早くない?」
「だな…」
「俺らもしとこ」
「え…」
俺の頬を掴み、キスをしてきた相楽。
良い意味で変わると言った生活は、宣言通り隙あらばイチャつこうとする相楽に圧倒される毎日だ。
観終わった頃、しおみーから電話がかかってきた。一気に身体に力が入る。
「誰から?」
「しおみー」
通話ボタンを押す前にゆっくりと深呼吸をする。
「ふぅー…」
そんな俺の手をそっと握った相楽。
「…もしもし」
「あ、佐野っちお疲れ!今大丈夫だった?」
「全然よゆー!どした?」
「来週の水木あたり暇だったりする?」
「あーごめん。来週実家帰んなきゃで」
「まじか。おっけ、また別日で誘うわ」
「りょーかい。じゃ、またなー」
通話がちゃんと切れたことを確認して、スマホを握ったまま相楽の肩に寄りかかった。
「はぁ〜…、緊張したぁ」
「佐野、俳優になれるんじゃない?」
「…馬鹿にしてるだろ」
「してないって。…よく頑張りました」
頭をポンポンされ、照れ臭くなる。
✳︎
「4日間も会えないとか、耐えられない」
ベッドの中で相楽は拗ねているのか、寂しいのか、よく分からない顔をしている。
「俺のいない間ここに居てもいいし、家に帰ってもいいし」
「…俺もついて行こうかな」
「それは絶対無理」
「そんなキッパリ言わなくても」
「今回は無理だけど…冬休みに帰る時は…一緒に来てほしい…です」
「……。」
相楽は何も言わず口元を片手で隠した。
あれ、ダメだった…?
「…あくまで俺の希望だから…」
「ごめん、ニヤけるのを我慢してた。…嬉しい、絶対行く」
「…ありがと」
「帰省中、毎晩電話するから絶対出て」
「うん。…でも、別に離れてる時ぐらい俺のことほっといてくれて大丈夫だから」
「ほっとくわけないじゃん。つうか、一生放っておかないから覚悟してて」
「…っ」
恥ずかしくなって顔を見られないように抱きついた。
どうしよう…幸せだ!
一軍に合わせて陽キャになる自分も、人見知りで自信のない自分も、まだ好きにはなれないけれど、相楽といる時の自分は結構好きだ。



