俺が俺に惚れてる

和樹の家はオートロックだし、親も不在だったので、誰に挨拶をするでもなく解散した。
俺の頭にグルグルと巡るのは、サイトの名前と見知らぬオッサンの顔。

その夜、俺は夢を見た。

それは、俺がまだ和樹だった頃の夢。
そして、俺が、和樹だった最期の日の夢。

大学受験を控えた俺(和樹)は、稔への想いに押し潰されかけていた。
稔に対する欲望を、抑えられない自分への嫌悪感で、死にたいとすら思っていたのだ。
でも、稔といつまでも一緒に居たいという気持ちの方が強かった。
だから、稔の親友として、心を殺して側で笑っていた。

でも、稔が無防備に見せる全てに、薄汚い欲望を抱く自分。
一緒に勉強していても、勉強に集中できない日々が増えて来て……。
そんな自分をどうにかしないと、そろそろ稔を傷付けかねない。
そう思った俺(和樹)は、出会い系サイトに頼る事にした。

相手は、後腐れのない関係を望んでいる人が良い。
出来れば、年上で慣れてそうな人。
選んだのは、二十歳と書いてある相手だった。
何度か食事をして、お互い惚れている相手がいる事が分かった。
つまり、身体だけの関係を望んでいる事を確認したのだ。

ただ、いきなりそんな相手に身体を委ねるなんて怖くてできない。
だから、しばらくはちょっと触れ合うくらいにしてもらった。
ひと月ほど会っていたら、相手には他にも相手がいる事が分かった。
それも、DK(男子高校生)数人と同時並行で付き合っているようだった。

非常に悩んだ。
複数人と付き合っているとしたら、どこから病気を持ち込まれているか分からない。
でも、複数人と付き合っているのなら、自分に執着する事も無い。
散々悩みに悩んだが、稔の側にいる為に、俺が病気を貰う訳にはいかない。
そう決意して、彼に関係の解消を伝えに行った。

そこで、俺は目を覚ました。
まだ、夜中の三時半だ。
そこまで怖い夢でも無かったが、心臓がバクバクと煩い。
真夏だからか、寝汗でシーツも布団もびっちょりだ。
ちゃんとクーラーもつけているから部屋は27度に保たれているのに……

寝直そうかと思ったが、あまりに心臓が五月蝿(うるさ)くて、眠れそうにない。
身体も起きてしまったのか、どんどん次から次へと汗が出て来て、気持ち悪い。
諦めてベッドから出て、床に座る。
その内、眠くなるかと思ったけど、それも無理そうだ。

検索してみようか。

俺が夢で見た出会い系のサイトは、和樹の部屋で見たQRコードの下に書いてあったサイト名と一緒だった。
スマホを開いて検索すると、アプリが出てくる。
これだ。
前世の俺は、このアプリで彼と出会ったのだ。

高校三年生の時に二十歳だったという事は、今は十八歳だろうか。
ヤリ目(もく)で登録していただろうに、勇気が出ないと伝えたら、食事だけで終わらせてくれて、次に会った時も触れ合うだけにしてくれた。
背はそこまで高くなかったけど、凄く大人な人に見えた。

今考えると、高校生を騙す悪い大人だったんだろうけど。
いや、たかが二つ年上なんて、そんなに大人でも無いか。
もしかして和樹は、あの人に出会うんだろうか。
そしていつか、あの人に身を任せたりするんだろうか。

そんなの、イヤだな。
和樹が、好きでもない奴とそういう関係になるなんて。
そんなの。絶対イヤだ。

誰でも良いなら。
誰でも良いなら、俺にしたらいいのに。