俺が俺に惚れてる

だからと言って、勉強会にそんな気持ち(闇)を持ち込んだりしない、出来る男。それが俺、赤坂稔です。

「まずどの教科からやる?」

和樹の部屋に通されて、全員が荷物を置いたので、鞄を漁りながらどの教科を出そうかと聞くと、堤谷が渋い顔をした。

「いや、お前。ガリ勉か。まずはちょっと親交を深めてからだろ」

親交を深めるって。こないだ仲良くお出掛けしただろうに。
でも、どうやら性急すぎると思っていたのは堤谷だけじゃ無い様で。

「もうちょっと、落ち着いてから始めたい気分ではあるわね」

と、菖蒲にも苦笑いで言われてしまった。
なるほど。確かに、フリートークの時間も必要だったかもしれないな。気まずいとか思っているのは俺と和樹だけだしな。多分。
早々に闇を持ち込んでしまっていたようだ。反省。

「まぁ、友井君が飲み物持って来てくれるって言ってたから、戻ってきてからね」

水流さんが俺をフォローするように言ってくれる。
水流さんは、和樹の事を名前で呼んでないのか。なんか、それはそれで複雑。
和樹の一方通行の好意とかだったら、水流さんに和樹の良い所を懇切丁寧に教えてやりたいとか思う不思議。

「そう言えば、普通に見送っちゃったけど、お手伝いした方が良いよね」

木谷さんが慌てて立ち上がろうとするが、その時には既に和樹が帰って来るところだった。
むしろ、慌てて立ち上がりかけた木谷さんと入ってくる和樹が危うくぶつかる所だった。

「あ、あぁ、ごめんなさい」

木谷さんが真っ赤になってワタワタしている。
和樹は、六人分のコップが乗ったお盆を机に置いてから、木谷さんに『こっちこそごめん、大丈夫だった?』とか聞いている。
俺の知っている前世の和樹っぽくは無いけど、俺の知っている現世の和樹っぽくはある。
リアルが妄想より良い奴って、不思議だよな。

「じゃあ、始めるか」

和樹が帰って来て、飲み物も全員に行き渡って、準備が出来たのを見て言ったのに、またもや堤谷に『おまえ、どんだけ勉強したいんだよ』と呆れられた。
むしろ、お前は勉強会に何しに来ているんだ。

「あ、赤坂君、キーホルダーつけてくれてるんだ」

一体どのタイミングが正解なんだと不思議に思っていたら、水流さんが俺の鞄のキーホルダーを指摘してきた。
まぁ、当然、他の皆の鞄にも付いてはいるんだけど、俺が普段見えない所につけていたからつけていると思ってなかったのかも知れない。

「別にいつもつけてるよ。見えないだけで」

ちょっと恥ずかしくてモゴモゴ言ったら『嬉しい』と満面の笑みを頂きました。
確かに、水流さんは雑誌に載っていてもおかしくないくらい可愛いな。

「まずは数学からやるか」

ちょっと見惚れていたら、和樹が数学のノートらしきものを机にドンと置いた。
今度は堤谷も何も文句を言わない。マジで、正解のタイミングが俺には分からん。

難しいなと思いながらも、俺も鞄から数学の公式集を取り出した。
和樹と一緒に作ったものなので、和樹と一緒に説明していく。
目的があると、特に緊張せずに話せた。
やっぱり、和樹とは気が合う、と思う。