俺が俺に惚れてる

和樹の煽りに、堤谷が何か言おうとした所で、チャイムが鳴った。
堤谷は、フーフー言いながら席に戻った。興奮しているのを抑え込もうと頑張っていた。

結局、デートじゃないという和樹の証言だけでは、真相は分からないままだ。
何の用事かも分からないし、どういう関係かも分からない。
いやに親し気という事だけが分かったけど、その理由も分からない。

はぁ。
考えても分からない事は考えたくないんだけど。
何をしていても和樹の事ばっかり考えてしまう、無限牢獄(ループ)に囚われてしまった。
幸い、和樹は俺の後ろの席なので、授業中に見つめてしまう事は無いんだけど。
だからこそ、何か異様に気になってしまう。
まぁ、この状況なら、誰だって気になるよな~。

そう言えば、俺(前世の和樹)はずっと稔の事を見ていたな。
授業中も、黒板より稔を見ていたっけ。
今日の寝ぐせはなかなか治らなかったんだろうなとか考えていた。

そんな事を思いだしたら、余計に気になってきた。
今、和樹は俺を見ているんだろうか。いや、見てないと思うけど。
と言うか、堤谷が斜め後ろで和樹をガン見しているのが眼の端に入ってくる。
俺は、そこまで人をガン見した事ないわ。

授業が終わるとすぐに堤谷が立ち上がって、和樹に突っかかろうとしたのだが、その前に和樹に声がかかった。

「友井、呼ばれてる」

廊下側のクラスメイトが珍しく和樹に声をかけたのだ。
原因は、話題の中心である、水流さん。
以前、俺を呼び出した時よりも堂々と教室の入り口に立っている。

「ちょっと行ってくる」

和樹がめんどくさそうに立ち上がる。
何か、それすらも仲良しの印みたいに見えて、何かこう、寂しいなって感じた。

「何なんだよ。マジ何なんだよ」

堤谷が『何なんだよ』星人になってしまった。
なんだかな~。
こないだのお出掛けは楽しかったのにな~。
全部、楽しいだけで終わったらいいのに。

堤谷のカバンに付いている青い花柄のキーホルダーを見て、こいつも楽しかったんだろうなと思った。
俺も一応、カバンの邪魔にならない所に付けては来た。
何か、付けてないと悪い気がして。

一番、突っ込んできそうな水流さんはクラスが違うから大丈夫かなとも思ったんだけど、部活に行ったら菖蒲(あやめ)が気付くだろうし、同じクラスの木谷(きたに)さんも大人しそうに見えて、きっと仲良くなったと判断出来たら控えめに文句言ってきそうだし。

でも和樹は、絶対付けたりしないだろうな。
と、思っていたのに。

和樹のカバンには、ちゃんと濃い紫色の花柄のキーホルダーが付けられていた。
しかも、割と目立つ場所に。

このキーホルダーに、何か思い入れでもあるんだろうか。
そう言えば、和樹が最初に選んだのがこのキーホルダーだった。

水流さんもこのキーホルダーを絶対買いたいって、売店に入った途端にこのキーホルダーが売っている場所に向かっていたな。

点と点が、線になる事は無く。
俺に分かることなんて何もない。