俺が俺に惚れてる

考えても仕方ない事だとは思うけど、覚えた違和感はどんどん膨れ上がる。

駅に辿り着いて、水流さんが目的の場所を見つけて走り出そうとした時、和樹はさり気なく腕を出して、水流さんが人にぶつかりそうなのを制止した。
『ちゃんと周り見ろよ』なんて、こんな自然に言えるか?

プリクラ機に入った時だって、和樹がドアを開けて女子を先に通した。
俺(前世の和樹)はそんなフェミニストじゃなかった。稔にならドアを開けて待ったりしたかもだけど、他の人にまでそんな事はしなかっただろう。

プリクラを撮る前にも違和感はあった。
水流さんと菖蒲が操作していたんだけど、各種選択画面でどうするかとかいう質問に応えていた。
いや、別に聞かれたら答えるのが普通だと思うよ。
でも、俺には考えられない程、丁寧に応えていたんだ。

「ハイアングルだけかアップもとか選べるんだけど、どうしよう」
「せっかくなんだし、ハイアングルだけの方が良いだろ」
「確かに。カメラ変わると焦りそうだしね」
「おすすめのポーズとか提案されたんだけど、めっちゃギャル!」
「まぁ、参考程度でいいだろ」
「ちょっとこういうカッコは恥ずかしいよね」
「無加工にしとくね」
「だな」

次から次へと繰り出される選択肢を、和樹は平然と答えていく。
俺にはもう、何が何やらさっぱりだ。

「デザインどうしよう」
「適当で良いだろ。邪魔にさえならなきゃ」
「あ、私アプリ持ってるから登録しとくね」
「よし。じゃあ、入ろ入ろ」

俺と堤谷は、会話に入るどころか、理解する間もなかった。
何。何で和樹はそんなにちゃんと話に入っていけるの?
むしろ和樹が決めてない?
水流さん、和樹に意見聞き過ぎでは?

あれよあれよという間に、俺たちは撮影ブースに入っていた。
和樹が開けて支えてくれたドアを通って。

ブースに入ってからも同じだ。
背景の色とか、場所とか、ポーズとか。
何でそんなに女子と普通に盛り上がれるんだ。
もう俺には、何回撮ったのかも判断できなかった。カウントダウンとか怖すぎる。
一応、事前に提案されていたからさっき買ったキーホルダーはちゃんと映るように持ったりは出来たと思うけど。自然に笑えていた自信は無い。

そしてまた、ボケーッとしている間に撮影ブースを出て、落書きコーナーみたいなのに入っていく女子を見送っていた。
ここには、和樹は参加しないらしく、俺と堤谷と三人で外に出た。

「お前、よくあんなに入っていけるな」

堤谷もビックリしていたらしく、感心したように和樹に声をかけた。

「いや、ああいう時に知らん顔してたら、意見出せって怒られると思って」

え、そうなの?
楽しそうに選んでいるから邪魔しちゃ悪いかと思っていたんだけど、むしろ知らん顔して意見出さないって怒られるとこなの?
難しすぎない?

「あ~、まぁ、確かに。でも、まさかお前が答えると思ってなかったからビビった」
「いや、そうだな。お前に任せても良かったな」
「いやいや。任せられても困るし。って言うか、マジで助かった」

何て、二人が会話しているけど、俺には何も入って来なかった。
女の子と付き合うって、きっと、物凄く大変な事なんだろうな~。

なんか、さっきのカウントダウンが未(いま)だに耳に響いて、気持ちだけがバクバクと追い立てられている気がする。