俺が俺に惚れてる

圧倒的(あっとうてき)敗北感(はいぼくかん)。
ガックリとうなだれた俺に、和樹がソフトクリームを差し出してくれた。
いつの間にか買って来ていたようだ。
と言うか、いつの間にか俺一人だった。

「あ、ありがと」

チョコとバニラのマーブルソフトクリーム。俺の大好物だ。
他のメンツは、クレープを買いに行ったらしい。

「そういえば、昔、うちでクレープパーティーしたな」


唐突に、赤坂家で行ったクレープパーティーを思い出した。
まだ出会って一年も経っていなかった、小学校の時。
まだ俺が前世を思い出していなかった時。

「クレープ食べたい」

いきなり、ふと思いついて俺が和樹にそう言ったんだ。
そしたら、和樹がクレープ屋さんの場所とかを教えてくれて、何かそれが凄く嫌だったのを覚えている。
クレープ屋さんの場所なんて俺は知らないのに、和樹はそんなの知ってるんだって、何かよく分かんないけど、何となく嫌だったんだ。
それで、『そうじゃなくて、作って食いたい』なんてワガママ言い始めて。
無理矢理、和樹を家まで連れて行ったんだ。

家に帰って、俺はあんまりネットとか調べ方分からなかったから和樹に全部調べてもらって、和樹が調べたクレープの材料を俺が戸棚とか色んな所から引っ張り出して並べた。
材料が全部揃った所で父さんが帰って来て、手伝ってもらう事になったんだ。
父さんは母さんと違って料理は全くできなくて、何なら火が怖いとか言う情けないタイプ。

結局、俺がフライパンに油垂らして、和樹が生地を流し込んで、父さんがハラハラして見るっていう感じになった。
泡立て器(ハンドミキサー)で混ぜるのは父さんが全部やってくれたけどな。
生クリームも父さんが作ってくれたか。


「あんときのクレープ美味かったな」

俺が思い出したことが分かったのか、和樹がソフトクリームを食べながら言う。
同じ時に同じ事を思い出せるって、凄い事だよな。

「ホイップクリームがちょっと混ぜ過ぎだったけどな」

父さんは、生地を焼いている俺たちをハラハラ見過ぎて、手元のクリームが混ぜ過ぎになっていることになかなか気付かなかったっけ。

「それもそれで良かったよ。稔はイチゴ入れ過ぎて、巻けなくてポロポロこぼしてて、小っちゃい手で慌てて拾ってて、可愛かった」

いや、お前の手だって小さかっただろうが。

「和樹はマヨネーズ入れ過ぎて酸っぱくなっちゃってただろ。ツナとハムとチーズと卵と、って全部乗せにした挙句にマヨネーズをドバドバ入れて」

父さんが、それはちょっと体に良くないかもしれないなぁ~って言いながら、スプーンでマヨネーズを取り除いてくれた。

「「まぁ、あれはあれで美味かった」」

ハモってしまった。

そういや、誰かが言っていたな。思い出が美味しいを作るって。

今日食べたものも、今日の思い出と一緒に美味しいって思えるのかな。
堤谷たちがクレープを食べながら帰って来る笑顔を見て、何となく思った。
みんなにとって、いい思い出になったら良いな。なんて。