余命半年の君と、一冊分の恋をした


そして迎えた、文化祭当日。休憩時間になった僕は、一人で適当に歩き回っていた。


「お化け屋敷どうですかー?」
「スタンプラリーやってますよー!」


四方八方から飛んでくる、勧誘の声。

元井から聞いた話だと、他校は一日目に生徒だけ、二日目が一般公開らしい。けれどこの学校は、二日間とも一般公開。

普段賑やかな場所が、さらに賑やかになる二日間。


「木瓜……じゃなかった。木目君」
「鳴宮さん。来てくださったんですね」
「まぁね〜。君が珍しーく呼んでくれたら、来ないわけないだろ?」


文化祭の準備期間に、彼女から誰も誘わないかと言われ、誘わないと答えた。すると、もったいないよ!と言われ、思いついた鳴宮さんを招待したのだ。

もっとも、招待しなくともこの人は、勝手に来ていただろうけど。


「あ、いた!木目君!」


ここ1ヶ月ぐらいで聞きなれた声が、後ろから響く。

最初は一緒にいることに、というか今も一緒にいることに尻込みをしてしまうけど、周りの視線にもだいぶ慣れてきた。

彼女が周りを黙らせている、と言った方が正しいのかもしれないけど。


「どうしたの?」
「私も休憩に入ったから、一緒に回ろうと思って!」
「じゃあ、俺はお邪魔だね。木目君、また」
「あ、はい」


鳴宮さんと別れ、彼女が行きたいところにすべてついて行った。

先輩方の模擬店のご飯を食べたり、お化け屋敷、レクリエーション、写真会。

休憩時間が残りわずかになった僕たちは、屋上に向かった。

行く途中に僕は飲み物を二つ買ってから、屋上で待つ彼女の元へ向かった。すると。

泣いているのだ。彼女が。いつも明るくて笑顔が似合う彼女が、泣いている。

こういう場に立ち会うのが初めてな僕は、自分でもわかるくらい動揺している。

こんな時、どんな言葉をかければいいんだろう。というか、何も言わずに待っていた方がいいんだろうか。

ペットボトルを握る手に、少し力が入る。

しばらくして、泣き止んだらしい彼女は立ち上がって、僕の名前を呼んだ。

どうやら、バレていたらしい。

観念した僕は、小さくため息を吐いてから屋上へと足を踏み出す。


「ごめんね?楽しい時にみっともないの見せちゃって」
「僕は大丈夫。だけど、君は大丈夫なの?」
「ちょっとね。写真会で撮った写真見てたら、泣けてきちゃって」


そう明るく笑う彼女の目元は、少し赤くなっていた。


「木目君は、私の事好きになっちゃダメだからね」
「なに、いきなり」
「……ううん!休憩終わるし、戻ろっか!」


その言葉の意味を、僕が理解するのはもう少しあとのことだった。