余命半年の君と、一冊分の恋をした


彼女と関わるようになってから一週間が経った頃。学校では、文化祭に向けての準備が始まった。

僕はどういうわけか、彼女と同じ係になった。

喫茶店をやることになった僕のクラスのメニュー作り。

彼女は絵が得意らしく、可愛い絵をスラスラと下書きしていく。


「メニューのフォント、これでどう?」
「おー、いい感じ!やっぱり私は見る目があるね〜」
「普通、自分で言わないと思うけど」


そう。彼女は係決めの時に、僕にメニューの文字を書かせたいと言ったのだ。

特にやりたいこともなかったから、すんなり了承した僕だけど、一つ気になることがあった。

僕たちは今、図書準備室で作業しているのだ。


「どうしてここなの?」
「え?だって木目君、うるさい場所苦手でしょ?」


彼女の発言に返す言葉がないどころか、目を丸くする。

手が止まった僕に気づいたのか、「教室は人も多くて声が聞き取りにくいから」と、笑顔で続けた。

僕がうるさい場所が苦手なのは、元井しか知らない。それがまさか、関わって一週間の彼女に知られているとは。


「君さ、人の事よく見てるって言われない?」
「言われる〜」
「少しは謙遜しなよ」


彼女の返答にすかさずツッコミを入れると、またもやクリーンヒットしたらしい。

彼女は楽しそうに「お腹痛い」と言いながら笑っている。

それを見ていると、心做しか僕の口角も少し上がっている気がする。いや、気のせいだ。


「よし、できた!見て、可愛くない?」
「僕に可愛いが分かるとでも?」
「思ってなーい。じゃ、教室行ってくるねー!」


ドアが閉まったのを確認したあと、僕は開いてるページとは別のページを開く。

このノートパソコンは僕のもので、昨日の夜に彼女から持ってくるようにと連絡が入ったのだ。

どうしてかと返信するも、既読無視で終わらされ、今になってようやくこのためだったのかと理解する。

ひとりでボーッとしていると、勢いよく開いたドアに肩がビクリと跳ねる。


「みんな可愛いって!」
「良かったね。でもそれ、手書きだからパソコンに入れられないよ」
「うわ、そうじゃん!えっ!?どうしよう、木目君!」


どうやらそこまで考えてなかったらしく、彼女は慌て始める。


「じゃあ、このメニュー表を見せてOKもらったら、このページに書いたらいいんじゃない」
「えっ?」
「もちろん、一発描きだけど。どうする?」


僕にしては珍しい挑発だけど、彼女はしばらく考え込んだ後、「やる!」と元気よく言い切った。