余命半年の君と、一冊分の恋をした


書店を出た僕たちは、先程彼女が言ったように近くのカフェでお茶をすることにした。

今日は天気もいいから、テラス席で優雅な気分を味わいという彼女の謎な気分に、僕は静かに同行する。


「もうすぐだねぇ〜学園祭」
「もうすぐと言っても、まだ二ヶ月先だけどね」
「木目君は、やりたいこととかあるの?」
「特にないかな。みんなに合わせるよ」


高校生活も青春も一度だけ。以前、鳴宮さんが僕に言った言葉だ。

本来なら家に籠って書きたいところを、今は何の案もないから、いつも以上に時間を持て余している。

きっと、新作を書いていたりだったり、締切が近かったら学校の行事は出ていなかっただろう。


「木目君って、昼間より自然に話せてるよね。心開くの早いって言われない?」
「どちらかといえば遅すぎるぐらいだよ」
「あはは!めっちゃ分かるかも!」


言われてみれば、どことなく普通に話せているかも。彼女持つ雰囲気というか明るさが、そうさせているのかもしれない。

否定しなかったのは、失礼だと思うけど。

運ばれてきた飲み物を、僕はひと口飲む。
彼女は紅茶とスイーツを頼んだらしく、写真を撮ってから幸せそうに頬張る。


「……女子ってさ、何で食べる時写真撮るの?」
「えっ?」


母親も昔、ご飯行くたびに写真を撮っていて、知らない人だけど周りにいる人達も撮っていたりする。

写真を撮ったところでフォルダがいっぱいになるだけで、どの道消すことになるんだから、撮らなくていいのに。

なんて考えていると、彼女はフォークを置いて、肘を立てて手を組み始めた。

なんだか嫌な予感がするけど、無視しておこう。


「木目君、ぜっったい他の女の子にそれを聞いてはならぬ」
「ならぬ?」
「女の子はね、写真が好きなの。写真というか、思い出?私の場合は後者だね」
「なるほど。そういう生き物だって覚えておくよ」
「君はもうちょっと、人との会話の仕方を学んだ方がいいね」


一〇分ぐらいお茶をして、彼女は帰る時間だと言ってお金だけ置いて帰っていった。

まだ十七時にもなってないけど、何か予定があるのかもしれない。

いや、予定があったらお茶しようだなんて誘わないか。

彼女が置いていったお金を受け取って、会計を済ませて帰路に着く。

この時の僕は、彼女が命に関わる重要なことを隠しているなんて、知りもしなかった。