余命半年の君と、一冊分の恋をした


脇役、小説や漫画で言う当て馬の恋の方が好きという人も結構いるのは知っている。

『秋君』も、メインの二人の友人の恋模様を番外編として描いていて、ファンレターの中には、その二人の恋が甘酸っぱくて好きという声もあった。

作者としては、メインの二人の恋を好きになって欲しいと思ったぐらいだ。

でも、『秋君』を好いてくれてることには違いない。


「あっ」
「ん?……あっ」


新作のヒントを貰うために他の作家さんの本を買おうと、学校帰りのその足で書店に向かうと、まさかの彼女に遭遇した。

偶然が偶然を呼ぶとは、こういうことなんだろうか。いや、学校でのことは偶然とは呼ばないか。


「偶然だね!」
「そう、だね」
「木目君も本買いに来たの?」
「本買う以外に書店に来る目的が他にあるの?」


本の背表紙を追いながら返事をしたから、つい元井に返す時と同じような返しになってしまった。けど、クリーンヒットしたのか、彼女は数回瞬きしたあと、声を出して笑った。

何故か笑いが止まらない彼女に代わって、周りの人に何度も頭を下げる。

というか、今の部分にツボに入る部分があったのだろうか。

後でお茶しようという彼女の強引的な言葉を合図に、とりあえず僕らは散開した。

彼女は漫画コーナーや雑誌コーナーを行き来していて、僕は小説コーナーの前から動いていない。


「あっ、舞衣羅さん新作出してる」


舞衣羅さんの綴る物語は読みやすく、分かりやすい。その上、感動して余韻に浸れる。

僕が小説を書き始める前、本屋でたまたま買って読んだのが舞衣羅さんのデビュー作。

ただ、なんとなく。本当になんとなく小説を書き始めて、コンテストに応募し、受かったというのが、作家になった流れ。

僕はふと、カゴの中を見つめる。

男子高校生がこんなにも恋愛小説を買って、気持ち悪がられないだろうか。

書くジャンルに恋愛を選んだわけじゃない。ミステリとかだと頭を使うし、書けるほどの実話も持っていない。

昨今、ファンタジーものが流行る中、いちばん書きやすかったのが現代の恋愛もの。ただ、それだけ。


「木目君、終わった?」
「……まだ」
「いっぱい買うつもりなんだね〜」


彼女は指を顎に当てて、何故か感心している。

僕が何を買うか迷ってる間に、彼女はサクッと買い物を終わらせたみたいだ。


「そういう君は?何を買ったの?」
「私はねぇ、これ!木瓜先生のお話が入った、アンソロジー!」
「そうなんだ」
「自分から聞いたくせに。興味無さそー」


興味がない訳では無い。ただ、書いたということを忘れていて、そういえば書いたなぐらいに思い出していただけだ。

リアルに友達が少ないのと同じく、作家としても親しい人はいない。

彼女が作家だったら……なんて、ないものねだりに過ぎない。

ひとまず、僕はカゴに入った数冊をレジに通した。