そして、彼女が亡くなってから一年が立とうとしていた、高校三年の十二月。
彼女と約束した本が無事に発売され、今日はそのインタビューとして雑誌の記者が学校に訪れてきていた。
僕があの木瓜粂と学校中に知れ渡ったのは、僕が元井にそう流して欲しいと頼んだからだ。
元井は驚いていたけれど、これが栞の本当に最後の頼みだから。
ベランダから部屋に戻ったあと、封筒の中に小さな紙がまだ入っていて、開くと、
「追伸。これが本当に最後のお願いです。どうか、君が木瓜粂だと言うことを隠さないで。君のファンは学校にもいっぱいいるんだから!あと、木目君はすっごく顔がいいんだから、隠すのもったいない!伊達メガネも外して、前髪も切りなさい!笑」
そう書かれていた。
彼女の言った通り、学校には主に女子だけど、僕のファンがたくさんいた。
伊達メガネを外して前髪も切ると、クラスは騒然とし、しばらく休み時間が休み時間じゃない日が続いていた。
この事に関しては栞のせいだから、怒ってもいいかもしれない。
「では、木瓜先生。次の質問に移りますね」
「はい」
「新刊、「余命半年の君と、一冊分の恋をした」はどのようについて思いつかれたのでしょうか?」
「同じクラスに余命半年の子がいたんです。僕たちは一緒に半年を過ごす中惹かれ合い、両想いでした。この新刊は、彼女との今での思い出が綴られた本です」
「実話、ということですね?」
「はい」
彼女から頼まれた、ということは伏せておこう。物語にも書いてることだし。
「では、先生にとって、この新刊はどんな一冊ですか?」
「……大切で、思い出の一冊です」
「なるほど。どんな方に読んで欲しいですか?」
「大切な人がいる人。特に、僕たちと同年代の学生たちに読んでもらいたいですね」
「ありがとうございます。では最後に、次回作はもう決まっているんですか?」
「そう、ですね……。しばらくは、書くつもりはありません」
年が明ければ卒業式も控えている。彼女が迎えられなかった卒業式。
けれど、クラスみんなで話して、制服を来ている彼女の写真を僕が持って、彼女の卒業証書も一緒に受け取ることになったのだ。
いつもクラスを明るい笑顔で照らしてくれていた彼女と、一緒に卒業を迎えたいという思いは、全員同じだ。
小説だけで食っていけるわけではないから、僕は医学の道を進むことにした。
成績は悪くないから、執筆の傍ら一生懸命勉強して、医大に合格した。彼女みたいな人を、一人でも減らせるようにと。
インタビューが終わり、僕は彼女と初めて言葉を交わした屋上に足を運んだ。
大の字でコンクリートの上に寝転がり、冬空を見上げる。
ねぇ、栞?僕は自覚するのが遅かったけど、僕も君のことが好きだった。明るくて笑顔がいちばん似合う君のことが。
僕からも言わせて欲しい。半年間、本当に楽しかった。ありがとう。
余命半年の君と一冊分の恋ができて、本当に良かった。出会ってくれて、ありがとう。
僕はずっと、栞のことを大切に想ってるよ。
【余命半年の君と、一冊分の恋をした 〜完〜】


